子育てに役立つ鉄道絵本、その正しい使いかた

子どもの成長に役立つという鉄道絵本。そのポイントを、教育学博士の弘田陽介先生が分かりやすく解説します。弘田先生は、お子さんと一緒に読書を楽しむことは有効なコミュニケーションでもある、とも話します。

赤ちゃんの記憶力アップは“反復”から

 まず鉄道絵本のジャンルを越えて、多くの0~1歳児に愛され続けているのが、安西水丸さんの『がたん ごとん がたん ごとん』(福音館書店、1987年)です。多くのお子さんは実際に蒸気機関車を見たことはありませんが、この黒いノスタルジックな機関車は飽きのこないシンプルな絵柄です。

 この絵本を見てみると、機関車の位置は左端か、中央か、右端と決まっています。機関車だけ見ていても動きは感じないのですが、共に新たに登場してくる赤ちゃんの身の回りのグッズ(コップやスプーン、ほ乳瓶や果物など)と合わせて見ると、この動かない絵の機関車には躍動感すら感じられるようになってきます。

 これを読む保護者の方は、ひたすら「がたん ごとん」と「のせてくださーい」という言葉を反復します。この本を好むのは、まだ自分で座ったり、じっとしていたりができない時期のお子さんです。保護者の方の脚の上でこの絵本を一緒にながめますが、「がたん ごとん」というセリフと共に保護者の方も膝を上下動させてみてください。もう電車に乗っているのと同じ気分でこの絵本を体感することができます。

 また、子どもは反復・繰り返しが大好きです。オールタイムでベスト絵本の上位にランクインする『大きなかぶ』と一緒で、子どもはお話を知っていながら、何度も同じ繰り返しの言葉がやって来るのを好みます。ちょうど生後半年くらいから、子どもの記憶力・認識力が急激に高まると言われています。前に聞いたお話を予見しながら、「また来るかな、また来るかな」、そして「やっぱり来た、また来た」と思いながらお話を聞くのは、子どもの記憶力・認識力の成長を促しますし、絵本や読んでくれる保護者への愛着を深めます。

 この反復・繰り返しは多くの絵本でも用いられていますが、実は鉄道好きの心の一番原点にあるものではないかと思っています。駅や陸橋の上から電車がやってくるのを見ることは、この反復・繰り返しの楽しみに基づいています。「また来るかな」と、いつ来るかわからない電車をドキドキしながら待ち、「やっぱり来た!」と期待が現実に変わる瞬間は、子どもにとって特別な時間です。子どもの絵本も、遠くからやってくる鉄道を待つような反復と期待の経験に裏打ちされています。

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