戦車と女子高生のアニメ『ガルパン』、なぜヒット?

スポーツ化した戦車

 そして『ガルパン』、もうひとつの重要な魅力が「本物の戦車で戦い、実弾は使うが、誰ひとり血を流さない」ということです。登場人物の言葉を借りるならば、「『戦車道』は戦争じゃない」のです。弾丸は命中しても絶対に車内へ被害を及ぼさぬよう厳格な安全対策のもと、対戦はルールにのっとり開催されており、選手はせいぜい眼鏡が割れてしまう程度の損害しかこうむりません。

「戦車道」はスポーツであり、言い換えてみれば、「スポーツもの」を「戦車」でやってしまったのが『ガルパン』であるともいえるでしょう。

 主人公の西住みほが所属する県立大洗女子学園は、お世辞にも強力とはいえない戦車がほとんどです。ユーモラスかつトリッキーな作戦で、第二次世界大戦における最強の戦車を揃える相手校と戦うさまは、小兵力士が横綱を相手に技の全てを出し尽くして奮闘する姿と重なり、西住みほとその仲間たちはどうやって相手に勝つのか、ファンはアドレナリンを大量分泌させ、その戦いぶりに興奮するのです。

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第二次大戦後のイギリス主力戦車の基礎を作りあげた名車両である「センチュリオン」。大洗女子学園の前に立ちはだかり、翻弄する。

 皆に愛され、多くの熱狂的なファンを獲得した『ガルパン』。次回作の展望はあるのでしょうか。杉山プロデューサーはこう語ります。

「劇場版をようやく完成することができ、現在進行形で多くの皆様に楽しんでいただいている現時点では、まだ次回作についてお話しできる段階にはありません。いまは1人でも多くの皆様に、劇場版と『ガールズ&パンツァー』の世界をお楽しみいただけるよう努力するだけです」

 まだ伝えられる段階にはないとのことですが、いつか新しい『ガルパン』が、ファンを再びワクワクさせる日がやってくるかもしれません。

『ガールズ&パンツァー 劇場版』
監督:水島 努
公式サイト:http://girls-und-panzer.jp/
Twitter公式アカウント:@garupan

【了】

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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コメント

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3件のコメント

  1. ガールズ&スティームロコモーティヴアーって2番センジ?

    • 発想は賛成なんだけどアクティブさに欠くか。
      スポーツと結び付いて来ない。

  2. 1/35のプラモデルの戦車を夢中になって作っていた世代のファンが多いね
    ガルパンでは、戦車の内部が忠実に再現されていて、感心しました。
    実際より誇張されていて、戦車が軽快に走りまわり、近距離での砲撃戦が繰り広げられる
    映画ならではのウソなのですが、ウソとわかっていても他の部分がリアリティーがあって楽しい作品でした。
    実際なら、乗員が事故死するような転落事故でも軽傷ですんでいるのは、娯楽映画ということでよいでしょう。
    次回作が楽しみです。