西武は「赤プリ跡地」をなぜ売らなければならなかったのか 岐路に立つ「鉄道会社のビジネスモデル」

西武ホールディングスが保有する物件で最大規模の旧「赤坂プリンスホテル」跡地を再開発した複合施設を売却します。一等地の不動産を保有する鉄道会社のビジネスモデルが転換する、その象徴的事例となりそうです。

「聖域なき流動化」推し進めるワケ

 それでは、西武HDはなぜ東京ガーデンテラス紀尾井町を流動化し、不動産の「回転型」に乗り出したのでしょうか。

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東京ガーデンテラス紀尾井町の「紀尾井タワー」(左)と「紀尾井レジデンス」(大塚圭一郎撮影)。

 現在の西武HDの社内取締役8人のうち5人を金融出身者が占めているように、同社は不動産保有という鉄道会社の伝統に縛られない経営体制になっています。そんな中で、新型コロナウイルス禍の打撃を受けて2021年3月期は723億円の純損失に陥ったのを教訓に、同社は「急激かつ甚大な経済環境変動に対する耐性を備え、新たな成長のストーリーを描く」ために戦略を転換したと説明します。

 加えて「物言う株主」とされるシンガポールの投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズが2024年5月に西武HDの5%超を保有する大株主になったことが表面化し、支持を得るには株価上昇につながる株主還元策を迫られた事情もありそうです。

 西武HDは今回の流動化発表とともに、その売却益を元手として配当金を増やすなどの株主還元策を公表。品川駅前の「品川プリンスホテル」の改装などにも約500億円を投資します。今後も「聖域なき流動化を実施する」と表明し、得られた資金で都心部の高輪・品川・芝公園などで再開発を進める方針です。

 JR東日本も不動産事業の「回転型ビジネスモデル」を標榜し、新宿駅近くの高層複合ビル「JR 南新宿ビル」を不動産ファンドへ売却しました。岐路に立つ鉄道業界はこのような参考事例を踏まえ、伝統的な不動産保有から脱却して「回転型」を模索する動きが加速するかもしれません。

【「赤プリ」実はまだある!?】いま「赤坂プリンス」を名乗る建物(写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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