「3社直通のロングラン特急」に乗ってみた 最新鋭車両で紀伊半島を半周!車内には「ミニ美術館」も

名古屋駅と紀伊勝浦駅を結ぶ特急「南紀」は、2023年7月に新型車両であるHC85系が投入され、車両が刷新されました。

目まぐるしく変化する車窓

 トイレへ向かうために車両を移動すると、車端部デッキには沿線の伝統工芸品を展示しているスペース「ナノミュージアム」がありました。鈴鹿市の伊勢型紙が展示されており、沿線の伝統文化を車内で楽しむことができるという点が、HC85系の大きな特徴となっています。

 1両あたりエンジン2台の出力で走行していた先代のキハ85系に対し、HC85系はエンジン1台の電力と主蓄電池の電力で同等の走行性能を実現しています。減速時にモーターを発電機として利用し、蓄電池に充電。発電機や蓄電池からの電力をもとに、電車と同様の主変換装置でモーターを駆動する方式となっています。

 車内に設けられた液晶には、減速時に「バッテリー充電中」、加速時に「バッテリーアシスト中」などの表示が出るため、チェックしてみるのも面白いでしょう。

 梅ケ谷~紀伊長島間の荷坂峠は、車窓の見どころの一つ。山中をどんどん下っていき、この区間では案内放送も流れました。紀伊長島駅を出ると熊野灘が見え始め、リアス式海岸が続きます。山から海へ、急に車窓が変化していくことが特急「南紀」の特徴です。

 熊野市の手前にある新鹿(あたしか)付近では美しい砂浜を望むことができました。三木里(みきさと)~新鹿間は、紀勢本線では最後に開通した「難所」。平地がほとんどなく、漁港をトンネル主体でつないでいくルートとなり、工期が長くなりました。

 熊野市以降は熊野灘を望みながら走ります。名古屋発の列車では、進行方向左側(海側)の座席の景色が良くおすすめですが、午前中の列車だと日差しが入ってきて眩しいほどかもしれません。

 列車は熊野川を渡って和歌山県に入り、JR西日本との境界駅となる新宮に到着。約3時間半の長時間乗車も、車窓が目まぐるしく変化することもあり、あっという間でした。座席が非常に快適だったこともあり、疲れは感じませんでした。なお、列車はここから先のJR西日本管内、紀伊勝浦まではワンマン運転となります。

 新宮駅は、駅からは徒歩圏に熊野速玉大社があります。また、秦の始皇帝の命で、不老不死の薬を求めて熊野にやってきたと伝わる徐福を記念した公園も駅からほど近い場所にあり、訪れてみるのも良いでしょう。

 かつて「南紀」で活躍していたキハ85系は名車として親しまれましたが、後継のHC85系は先代の良い部分を受け継ぎつつ、時代に合わせて進化したことが感じられました。

【画像】え!? これが特急「南紀」車内にある「ミニ美術館」です

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