島国日本の造船、いま大きな岐路に なぜ困難を極めた三菱・大型客船

日本の大型客船建造、このままダメになる可能性

 前に述べたとおり、三菱重工は大型客船を建造できる日本で唯一の企業です。しかし今回のような混乱のなか、同社は今後も客船建造に取り組むのでしょうか。いま客船業界や造船業界において、それが大きな関心事になっています。

 現在、日本のクルーズ客船は郵船クルーズ、商船三井客船、日本クルーズ客船の3社が、あわせて3隻を運航しています。しかし船齢はどれも20年を超えており、このまま新造されなければ「事業継続すら問われる」(クルーズ会社)ところまで追い込まれています。

 すでに業界内には、「2015年秋には三菱と郵船が建造に合意したが、この話は流れた」だとか、「海外の造船所との交渉に入った船会社もある」といった“未確認情報”も飛び交っています。

 そして日本のクルーズ会社からは、「日本の客船は、テーマパークのような大袈裟な工事にはならない」、「(『ダイヤモンドプリンセス』の例にもあるように)客船建造の仕事は継続すること以外に成功しない」など、「日本の造船所による客船建造の灯を消さないで欲しい」との声も強く出ています。

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かつては戦艦「武蔵」も建造した三菱重工の長崎造船所(2014年2月、恵 知仁撮影)。

 三菱重工は今後の客船建造について、「エンジニリング事業として位置づける」という考え方を示しているだけで、具体的な取り組み方針を示していません。

 海運界は現在、また深い「不況の谷」へ差し掛かり、造船業界は深刻な受注難に見舞われています。しかし、ドイツのマイヤー造船所は2023年納期でディズニークルーズからの客船を受注したという情報もあり、記録破りに受注残を積み上げ、活況に沸いています。さらに中国のクルーズ市場は昨年100万人を超え、まさに伸び盛りにあります。

 こんな時期に日本は、クルーズ客船の建造から尻尾を巻いて逃げ出そうというのでしょうか。

【了】

Writer: 若勢敏美(船旅事業研究家)

1949年生まれ。業界紙を経て1980年、海事プレス社へ入社。1989年、雑誌『CRUISE』創刊に参画し、翌年から編集長。2008年、海事プレス社の社長へ就任。2012年退任。この間、取材、プライベートを含め35隻の客船に乗船して延べ55カ国を訪問。地方自治体や業界団体主催の講演会などに多数出席。

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コメント

1件のコメント

  1. 目玉の船見たくねーけ。