羽田航空機衝突事故で報じられぬ「機体装備の問題説」とは? 海外では真っ先に指摘も…経過報告でも“ノータッチ”
海上保安庁機とJAL機の衝突事故では、海外メディアは真っ先に “システム上の問題”が指摘されてきました。経過報告でも明るみに出ていないその装置とは、どういったものなのでしょうか。
「人間のミスをシステムでカバー」が求められるのに
海保機がADS-Bを装備していたら着陸に向けて進入していたJAL機のコックピットの画面には海保機の位置が表示されていたでしょう。それと同時に、海保機のコックピットの画面でも同様に同じ滑走路へ接近中のJAL機が表示されていたはずです。
つまり、ADS-Bの導入が遅れたことで衝突事故が起きてしまった可能性が考えられます。海外メディアがADS-Bに注目しているのはこのためですが、国内の主要メディアや国交省がADS-Bに関する言及を一切していないのは極めて不自然なのです。
もし、事故調査委員会の報告書が最後までADS-Bに関する記述を避けるような事態になると報告書そのものが国際的な信用を失うことにもなるかもしれません。
実はこのADS-B、日本では仙台空港で2003年ごろから実証実験が行われています。海外ですでに実用化しているシステムの評価と導入への検討に20年以上要していることになります。なぜこんなに時間がかかっているのでしょうか、国土交通省はこの説明も求められるでしょう。
事故原因に話を戻しましょう。人間は必ずミスを犯します。人間のミスをシステム全体から排除した新幹線は比類のない安全性と信頼性を半世紀以上にわたって実証し続けています。この経験は航空にも応用できるでしょう。
システムはその道のプロである管制官やパイロットも、必ずミスを犯すという前提を織り込んで設計する必要があります。ミスを犯しても事故が起きない、起きにくいシステムが求められているのです。
今回の羽田空港衝突事故の教訓を活かすならば、まずはADS-Bの導入だと筆者(中島二郎:航空アナリスト)は考えています。近い将来に発表される最終的な事故報告書の中でどこまで踏み込んだ内容が出てくるのか、引き続き注視する必要があるでしょう。
Writer: 中島二郎(航空アナリスト)
各国の航空行政と航空産業を調査するフリーのアナリスト。
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