前代未聞「電車とバスの“二刀流運転士”募集」どっちも人手不足だから? 秘めた狙いを社長に聞いた
岡山電気軌道が全国で初めて、路面電車とバスの“二刀流”運転士を募集しています。別々の法律に基づき運行される交通機関ですが、実は意外と親和性もあるのだとか。両方を保有する岡電ならではの狙いがありました。
「岡電二刀流」役員自らがサムライ姿でアピール
岡山電気軌道(岡山市)が路面電車と路線バス(岡電バス)の両方の運転士を務める新職種「二刀流乗務社員」を全国で初めて導入して注目を浴び、2025年1月12日の第1期募集選考会には募集枠の10人を上回る13人が挑みました。発案者の小嶋光信社長は、人手不足対策のほかにも“秘めた狙い”を明かしました。
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2024年12月5日に岡山市で開かれた二刀流乗務社員発表の記者会見。「岡電二刀流」と書いたはちまきを締め、サムライ姿で登場した岡電の大林玲嗣常務は「地方の公共交通を担う二刀流。やあーっ」と言いながら2本のおもちゃの刀を振り回しポーズを決めてアピールしました。
両備バスや和歌山電鉄などを抱える両備グループ代表でもある小嶋さんは筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)の2025年1月のインタビューで、大林常務の姿を「本当はシャイな性格なのに、何としてでも乗務員を集めなければいけないという必死さが出ていた」と称賛しました。
「二刀流乗務社員」は、未経験者については18~40歳を対象に募集。採用された場合、まずはバス部門に配属されて大型2種免許を取得し、路線バスの運転士として1年間乗務。続いて路面電車部門に異動し、運転するための国家資格の動力車操縦者運転免許(乙種電気車運転免許)を取ります。
晴れて二刀流乗務社員になれば毎月5万円の「二刀流手当」が支給され、基本的に6か月交代でバスと電車を運転します。岡電は第1期の採用者が2025年4月に入社することを見込んでいます。
より深刻なのはバス運転士不足
少子高齢化や人材獲得競争の激化、さらに運転士の時間外労働時間の上限規制による「2024年問題」が逆風となり、バス業界は運転士不足が深刻化しています。日本バス協会は2023年時点で24年度のバス運転士不足が約2万1000人と見込み、30年度には3万6000人に拡大すると予測しました。
警察庁の2023年版運転免許統計によると、大型2種免許保有者数は78万2694人と、01年(119万1554人)の3分の2の水準に落ち込みました。運転手の高齢化を背景に、2023年の保有者のうち65歳以上が36万4999人と全体の約47%を占めています。
バス会社は対策として定年を迎えた運転士の再雇用と、待遇改善などによる採用強化をクルマの両輪のように力を入れています。一例として奈良交通が2024年10月に定年年齢を60歳から65歳へ引き上げ、最長75歳まで働けるようにしています。
それでも事業環境は厳しく、帝国データバンクの30以上の路線バスを運行する127社に対する2023年の調査で、23年および24年以降の路線の減便・廃止を実施または予定している会社は計103社と全体の約81%に上りました。
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