埼玉の「恐ろしい道路陥没」はどこでも起こり得る? 「下水道管老朽化」という根深い問題 幹線道路ほどヤバいワケ

埼玉県八潮市の道路陥没事故は、交差点にあるマンホールの下で起きました。崩落するはずのない路面が突如、なくなってしまう。老朽化した下水道管の腐食などがきっかけで起きる災難であり、そこには全国共通の課題があります。

気づかぬうちに大穴があく「管の上側」

 巨大なコンクリート下水管は、一般には安全だと考えられています。耐久年数も50年あり、埼玉県はこれを60年まで延ばして使い続けることを決定しています。埼玉県が管理する現場の流域下水道管は1978年建設、1983年に供用を開始しました。すでに40年が経過していますが、年数的に問題はありません。

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職員の報告に厳しい表情を崩さない大野元裕埼玉県知事(中島みなみ撮影)。

 被害者の救出が優先されている現状で、埼玉県の下水道管理者と道路管理者は、陥没の原因を特定することができません。しかし、下水道管理者によると、下水道管が破損する一般的なメカニズムは次のようなものです。

「汚水が滞留し(管が)腐食することで(細菌が)硫化水素を発生させます。軽いガスはコンクリート管のおもに上部、壁面に結露して硫酸に変化します。すると、コンクリート壁を腐食させ鉄筋をむき出しにします。保護層を失った鉄筋も腐食してひびを作り、損傷は大きくなります」

 硫酸の腐食は水に浸かっている部分にはできません。穴は下水道管の上側に発生するので、下水管の上にある土砂、つまり道路の下にある土砂が砂時計のように下水道管に落ちて、道路と下水管の間に空洞を作ります。幹線道路の舗装は厚みがあるので、ぎりぎりまで道路を支えて、ついに崩落します。

 この穴が下にあれば下水の流量が減るので発見も早いですが、上にできる穴は流量を維持したまま。そのうえコンクリート管に流れ込んだ土砂も下流に流してしまうので、損傷の発見はいっそう困難になる、というわけです。それだけではありません。

「民家と接続するような細い下水管であれば、掘り返して新しい管に取り替えることができますが、幹線道路の下にある巨大な下水管は、地下鉄を建設するのと同じようなシールドマシンを使うこともあり、通行規制を伴います。しかし、下水道管の直径が大きいので、場合によっては人が中に入って補修することができ、適切な更新があれば取り替えなくても長く使えると言われています」

 ただ、埼玉県は2020年に現場となった交差点の上流500mで、鉄筋がむきだしになった不健全なコンクリート管を発見し、今も補修計画を練っている途上でした。また、2021年には下流で、ただちに修繕が必要なほどではありませんが、前者ほどではありませんが不健全な状態を把握していました。

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