名乗り上げた国とは?「ロシアン・ステルス」初の外国輸出 でも“販売成功”には程遠いワケ
ロシアの新鋭戦闘機Su-57が初飛行から15年目にしてようやく最初の輸出先を得たようです。しかしSu-57の生産は遅々として進んでいないため、その実現性には多くの問題が残るようです。なぜ本格生産できないのでしょうか。
アルジェリアでも評価試験しかできない可能性が
前述したように、アルジェリアはソ連時代からロシア製の航空機を多く運用しており、現在スホーイSu-30MKAを主力戦闘機として運用しています。同国は新鋭機の導入に関心を示しており、Su-57を購入する意思があると報じられてきました。しかし、仮に契約が締結されたとしても、ロシア側が短期間で実際に機体を供給できるか疑わしいのは先に述べた通りです。

ゆえに現状では、アルジェリア向けに納入できるとしても数機程度にとどまる可能性が高いと言えるでしょう。これは主戦力となり得る実用的な配備というよりも、評価試験の段階にとどまることを意味します。
アルジェリアにとってSu-57は新しい運用概念を必要とする機体であり、現在のSu-30MKAと比べても整備や運用のハードルが格段に高いと推測されます。そのため、導入後すぐに実戦配備することは難しく、まずは限定的な運用を通じて戦術や技術的適応を進める段階が続くのではないでしょうか。
仮にロシアが生産能力を向上させ、安定した供給体制を確立できれば、アルジェリア向けのSu-57配備が本格化する可能性はあります。しかし、エンジンや半導体問題が依然として未解決である以上、短期間での量産は見込めないかもしれません。
一方で、アルジェリアにとってもSu-57導入は政治的な意味を持ちます。近隣国モロッコが新鋭のF-16Vを導入し、米欧との軍事協力を強化するなか、アルジェリアはロシアとの関係をより深めることで対抗しようとしています。Su-57がその象徴的な存在となる可能性は十分にあります。
とはいえ、ロシアにとっても現時点でのアルジェリアへのSu-57輸出は「象徴的な取引」にとどまる可能性が高く、両国とも同機を実戦力としてカウントできるようになるまでには、さらなる時間と技術的進展が必要であるのは間違いないでしょう。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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