アムロにあこがれ、借金3000万から世界一へ 室屋義秀選手、快挙へのあゆみ

借金3000万円からの世界の頂点へ

 しかしながら室屋選手は、三十路を目前に一念発起。3000万円の借金をし、スホーイSu-26というエアロバティクス機を購入。“自分の翼”を手に入れ、資金繰りに悩みつつも多くの人より助けを得ながら、トレーニングを重ねました。

 そして「レッドブル・エアレース」のパイロットとしてスカウトされ、2009(平成21)年、同レースにデビュー。室屋選手はついに、「世界一のパイロット」になれる舞台へ立ったのです。

 それから7年、「目標」は現実のものになります。

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日の丸と富士山をモチーフにしたトロフィーを掲げる室屋義秀選手(中央)と、チェコのマルティン・ソンカ選手(左)、アメリカのカービー・チャンブリス選手(写真出典:Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)。

「アムロ・レイにあこがれていた頃の自分に何かひとことだけ言えるとするならば、『想いや言葉というものは凄い力を持っている。常に夢を想い続ける、そして言い続けることによって実現性を帯びてくる。妄想でもいいから言い続けること』、そう伝えたいですね」(室屋義秀選手)

 室屋選手は「レッドブル・エアレース千葉2016」に優勝したあとのインタビューにおいて、そう語りました。かつての自分自身に向けての言葉ですが、同時に、いまの子どもたちに向けたメッセージでもあるでしょう。今回の歴史的快挙を目撃した子どもたちのなかに、将来、「アムロ」ではなく「『ムロヤ』に憧れてパイロットを目指した」と答えるエアレース選手が現れるきっかけになったかもしれません。

 今後、室屋選手は「レッドブル・エアレース ワールドチャンピオンシップ」年間タイトルを目指し、残り5戦を戦います。室屋選手の2016年シーズンは始まったばかりです。

【了】

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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