「トイレも無ェ!エアコン無ェ!外は灼熱極寒だ!!」過酷な大戦中の戦車乗り…どう乗り切った?

戦車乗りは陸軍の花形と言われていますが、その生活は現在でもかなり過酷です。しかし、第二次世界大戦中はもっと大変でした。

「冷凍庫に生きたまま入る感じ」実は寒い方が格段上のヤバさだった…

 では、場合によっては命の危険が及びかねない、車内の暑さ寒さはどうしたのでしょうか。戦車は鉄の塊です。夏場ともなれば車内の温度は急上昇し、50度近くになることもあったといわれ、その辛さは想像を絶します。

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61式戦車の内部。かたいシートに冷たそうな鉄の壁が迫りくる。電灯もなく空調システムもないこの狭い空間で、長時間を過ごすのはかなりのストレスだろう(凪破真名撮影)

 しかもドイツ軍と連合軍は北アフリカ戦線という砂漠地帯でも戦闘をしています。また太平洋でもフィリピン戦線などでは日米双方が戦車を投入していました。つまり、高温地帯での戦闘を強いられていたわけです。

 こうした過酷な戦場に投入された戦車兵が行った暑さ対策は、戦闘地域以外ではとにかく「戦車のありとあらゆるハッチを全開にする」という方法でした。意外なことに戦車は日陰や木陰に置いておけばそれほど車内温度は上がらなかったそう。また、走行中は風が入るため、水分さえ確保できればなんとか耐えられる環境ではあったといわれています。

 では暑さに比べ、冬の寒さがマシかといえば、そんなことはありません。

 むしろ冷暖房のない戦車内では、寒さの方が危険でした。車体の断熱技術は現代ほどまだ発達していない状態で、さらに内装も樹脂などは殆ど使われていません。ロシアの戦場となれば、マイナス数十度の外気に車内が絶望的なほど冷やされます。

 ドイツ軍、ティーガー重戦車の指揮官で、東部戦線を経験した将校はこのように述べています。

「何週間にもわたる戦車での生活は、楽しいものではかった。狭さとひどい寒さのせいで、時間とともに疲労が蓄積していった。(中略)我々が吐く息で戦車の内壁が結露し、すぐに凍結する。うとうとして戦車の壁に頭を付けると、次に目を覚ました時には髪が戦車の内壁に凍り付いてしまっていた」――戦車内の寒さは「冷凍庫」と称され、その寒さから激しい凍傷となり、手足を失った戦車乗員も多くいたといわれています。

 現代戦車はこの点でいえば、多少改善されているといえるでしょう。ただ、こうした装備が充実し始めたのは21世紀に入ってからです。

 陸上自衛隊の戦車や機動戦闘車もオプションではあるもののクーラーを取り付けることが可能で、エンジンの暖気を利用した暖房機能も付いています。世界の戦車も同様です。空気清浄機が搭載されている車両も多く、空気の清浄さが保たれるといえるでしょう。

【本格的だ!】これが、トイレつきの装甲車です!!(写真)

Writer:

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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