山火事こそ「US-2の出番でしょ」→到底ムリ? 日本が誇る“飛行艇”技術は消えてしまうのか
岩手県大船渡市で発生した大規模火災を踏まえ、国会では消防飛行艇の保有について議論が行われました。日本には国産の飛行艇である「US-2」が存在しますが、これを消防飛行艇に転用するのは難しいようです。その理由は何なのでしょうか。
民間機型の方が「はるかに厳しい」型式証明
筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は2017(平成29)年に開催されたパリエアショーで、ロッキード・マーティンの軍用輸送機C-130Jの民間機型「LM-100J」の取材をしたことがあります。取材に応じてくれた同社のスタッフは「火災対策などで型式証明を取得するための基準は民間機の方がはるかに厳しく、LM-100Jの開発にあたってはその基準を達成し、型式証明を取得するためのデータ収集に苦労した」と述べていました。

型式証明の取得には、経験の蓄積によって得られるノウハウが必要となりますが、日本と日本企業にはそのノウハウが不足しています。三菱重工業がスペースジェット(MRJ)の開発を断念した理由の一つも、型式証明を取得するノウハウが不足していたことにあります。
一方、US-2の軍用機型の輸出には、型式証明の取得は必要ありません。このためインドやインドネシアと輸出に向けた話し合いも行われていました。しかしUS-2は高性能であるが故に高価なため、両国との話し合いはなかなか進みませんでした。
インドは製造業を発展させるべく、主要な産品を極力国産化する「メイク・イン・インディア」政策を進めています。このためインドはUS-2を導入する場合、インド国内で生産する前提で技術移転を求めましたが、インドでの生産が困難と判断した日本側が難色を示したことも障害となりました。
もっとも、インドおよびインドネシアとのUS-2輸出に向けた話し合いが打ち切られたという公式発表はありません。ただ、両国とはもがみ型護衛艦と、そのセンサーシステムの移転に向けた話し合いも行われているものの、US-2に関する話はまったく聞きませんので、輸出の可能性はほぼ無くなったと見てよいでしょう。
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