山火事こそ「US-2の出番でしょ」→到底ムリ? 日本が誇る“飛行艇”技術は消えてしまうのか

岩手県大船渡市で発生した大規模火災を踏まえ、国会では消防飛行艇の保有について議論が行われました。日本には国産の飛行艇である「US-2」が存在しますが、これを消防飛行艇に転用するのは難しいようです。その理由は何なのでしょうか。

次の時代はコレだ! 新明和工業が力を入れる先とは

 海上自衛隊の運用するUS-2を改良して、海上自衛隊が消防飛行艇として運用することはもちろん可能ですが、前出した高橋参議からの質問に石破首相は「検討する」と述べたものの、現用機の改造は維持費が高額で、「本当に飛行艇でなければならないのか、議論しなければならない」と話しています。新造機の追加は1機218億円と高価なことから、US-2消防飛行艇型の導入には慎重な姿勢を示しています。

 1機218億円という価格は令和7年度予算案に計上されている取得費ですが、胴体と翼部のコンポーネントを供給していた下請け業者の三菱重工業と川崎重工業がコンポーネント製造から撤退したため、2024年8月に退役した機体の部品を再利用するなどして、どうにか取得費を計上したというのが現状です。今後、救難飛行艇型が調達できるのかも不透明な状態にあります。

 では、US-2のメーカーである新明和工業は何を進めているのかといえば、有人飛行艇のノウハウを活かした無人飛行艇「XU-M」の研究開発です。

 無人飛行艇を研究開発しているのは同社だけではありませんので、XU-Mを念頭に置いていたのかは定かではありませんが、どのような自律(無人化)技術で日本と協力できるのかを調査する目的で来日した英BAEシステムズのロブ・メリィウェザー氏は、2025年3月10日に行われた記者向け説明会で、注目している日本の技術の一つに無人飛行艇を挙げていました。

 新明和工業には前身の川西航空機時代から数えると、90年近く飛行艇の開発・製造に携わってきたノウハウがあります。その蓄積した技術をロスト・テクノロジー(失われた技術)にしないためには、有人飛行艇に固執せず、無人飛行艇に活用していくべきなのではないかと筆者は思います。

【黄色いUS-2!?】過去に展示された「消防飛行艇案」を写真で(画像)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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