山火事こそ「US-2の出番でしょ」→到底ムリ? 日本が誇る“飛行艇”技術は消えてしまうのか
岩手県大船渡市で発生した大規模火災を踏まえ、国会では消防飛行艇の保有について議論が行われました。日本には国産の飛行艇である「US-2」が存在しますが、これを消防飛行艇に転用するのは難しいようです。その理由は何なのでしょうか。
民間機版US-2が難しいワケ
石破茂首相は2025年3月10日に開催された参議院予算委員会で、消火能力の高い消防飛行艇の可能性について、「検討を早急に行う」と述べました。

この発言は、岩手県大船渡市で発生した大規模山林火災に関して高橋光男参議院議員が行った質問に対する回答として述べられたものです。高橋参議院議員は「(山林火災は)初期消火が重要だ。しかし、地上からでは限界がある。空中消火能力を強化していくことが急務だ。海外では主流となっている消防飛行艇の導入を進めるべきだ」と述べ、さらに海上自衛隊が運用している「US-2」救難飛行艇をベースに消防飛行艇を開発する可能性が過去に検討されていた事例を挙げました。
2025年2月以降、大船渡市をはじめとする日本各地では大規模な山林火災が発生していることから、SNSでは「US-2をベースに消防飛行艇を開発すれば、消防飛行艇が普及している海外にも需要があるのではないか」という意見が見受けられますが、消防飛行艇型を含めたUS-2の民間機型を開発して輸出することは、ほぼ不可能です。
自衛隊の運用する航空機は防衛大臣の部隊使用承認が下りれば飛行できます。それに対して民間航空機は安全性および環境適合性の基準を充たしていることを証明する「型式証明」を取得して、初めて飛行することができるのですが、US-2はこの型式証明を取得していません。
型式証明の取得には、試験を重ねて安全性と環境適合性を充たすことを証明する膨大なデータが必要となります。通常データ収集は開発と並行して行われるのですが、防衛庁(当時)の予算で開発され、民間機型の開発を想定していなかったUS-2には、当然のことながらデータはありません。
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