「中古の『ホンダジェット』、メーカーが直で売りまーす!」なぜ? “三方よし”の激強施策のウラのノウハウ

ホンダの「認定中古車」ならぬ「ホンダジェット」のメーカー認定の中古機が、実績を挙げつつあります。「認定中古機」はどのようなメリットがあり、なぜ航空機メーカーがわざわざ中古機を販売するのでしょうか。

なぜホンダは「中古の民間機」を売るのか

 では、なぜHACIは認定中古機事業に参入したのでしょうか。

 筆者は「ホンダジェット」の販売数の増加が背景にあると考えます。初号機が顧客へ引き渡されたのは2015年以降で、これまでに250機以上が販売されました。販売から10年近くが経過し、ユーザーによっては、クルマを乗り換えるように、ビジネスジェットを“買い替え”てもおかしくない時期に差し掛かっているといえるでしょう。

 そのようななか、HACIが古い機体を買い戻し、認定中古機として新たなオーナーに渡れば、「ホンダジェット」の品質もアピールできます。なお、買い戻した「ホンダジェット」を実際に「認定中古機」とするには、購入前検査と称して機体の208か所以上に異常や不具合がないか確認し、これに合格する必要があります。

 2025年3月現在、HACIの公式サイトには点検に合格した3機の認定中古機が掲載されています。3機の着陸回数は61~870回、飛行時間は81~730時間と差がありますが、これはビジネスジェット機らしく前オーナーの使い方に違いがあったためです。

 なお、認定中古機も走行距離の短い自動車のように飛行時間の短い機体の方が人気もあるということで、HACIは累積飛行距離の少ない機体の品揃えも重視しているとしています。

 また、こうした認定中古機は既に旅客機でも始まっています。ANA(全日空)が2025年以降に追加導入する7機のプロペラ機DHC8-Q400は、いずれもデ・ハビランド・カナダ社の責任の下、整備・改修が実施されて引き渡される認定中古機です。

 認定中古機は、メーカーにとっても品質を長くアピールする機会となりますし、ユーザーにとっても導入コストを抑えながら、良質な機体を手に入れることにつながります。それゆえに今後は認定中古機と銘打った販売が増えるかもしれません。

【画像】かなりでかい! これが激変の「新型ホンダジェット」全貌です

Writer:

さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。

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