世界初の「新燃料船」実証が完了! “燃やしてもCO2出ない”でも“毒性は強い”どう克服? アンモニア燃料船

日本郵船が世界初となる商用「アンモニア燃料船」の実証航海を終えました。今回は小さなタグボートですが、近く大型船も実現します。燃やしてもCO2が出ないアンモニア、人体への“毒性が強い”というデメリットはどう克服したのでしょうか。

世界初の「アンモニア燃料船」完成!

 日本郵船は2025年3月28日、アンモニアを燃料として使用するタグボート「魁」(278総トン)の実証航海が完了したことを記念して横浜港内で式典を開催しました。商用利用を前提としたアンモニア燃料船は世界初です。

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アンモニア燃料タグボート「魁」(深水千翔撮影)。

 同社の曽我貴也社長は「魁」について「海運業界、造船業界、そしてエンジンメーカーも含めて、脱炭素に取り組んでいく道しるべになることを期待している」と述べました。

 同社はアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC)の開発に取り組んでおり、報道関係者に披露されたアンモニア燃料タグボート(A-Tug)「魁」はまさにその“魁”となるものです。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション(GI)基金事業である「次世代船舶の開発」プロジェクトの一環として、日本郵船とIHI原動機が日本海事協会の協力を得て開発しました。

 GI基金事業は2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする目標を日本政府が宣言したことをきっかけに始まりましたが、今や日本郵船、商船三井、川崎汽船のような大企業から、IMO(国際海事機関)のような国際的な組織まで「2050年ゼロエミッション」を掲げており、CO2を排出しない次世代燃料に対応した船舶の実用化に向けた取り組みが急ピッチで進められています。

 特にアンモニアは燃焼時にCO2(二酸化炭素)を排出しない環境に優しい次世代燃料として期待されており、日本郵船はアンモニア燃料船を2030年までに3隻、2031年から2033年にかけて12隻整備する方針です。

 式典であいさつをした菅 義偉元首相は、首相在任中に「2050年カーボンニュートラル宣言」と「GI基金」の創設を行ったことに触れ、「地球温暖化対策は経済活動にとって制約ではなく、むしろ新たな投資やイノベーションを生み出すものだ」と強調し、「魁」の意義を次のように話しました。

「国際海運のカーボンニュートラル実現の鍵はアンモニアや水素を使用するゼロエミッション船の開発と導入であると伺っている。その代表としてGI基金により、世界初のアンモニア燃料船の導入が横浜で実現したことは大変喜ばしい。この一歩を、世界を変える大きな動きとしていくためには、大型船に対応した技術開発が必要だ」

【写真】煙突がスゴイ…「世界初の新燃料船」

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