トランプ関税「ホンダジェット」の生産に影響ないの? 航空業界を揺るがす事態にどう対応するのか
アメリカのトランプ政権による貿易関税問題は米国内で生産されている「ホンダジェット」に影響はないのでしょうか。製造元であるホンダ エアクラフト カンパニーへ話を聞きました。
新型機開発に影響も?
HACIが現在生産するホンダジェットはビジネスジェット機の中で最も小さいVLJ(ベリー・ライト・ジェット)クラスになり、競合する機種は米国外で見当たりません。このため米国外で販売シェアを奪われる事態に発展する可能性は大きくないと言えるでしょう。
受注ペースについては、トランプ現大統領の当選が現実視され出した2024年後半から緩やかになったほか、受注はどれほどあるか明らかでないものの、2年程度はバックオーダー(受注残)機が残っているともされるため生産への影響も実際にないと思われます。
とはいえ航空機部品の供給網は、世界のどこかで軍事情勢の懸念が高まれば軍用機へシフトし、ビジネスジェット機へは遅れがちになります。これに加えて今回の関税問題は、長引けば大型旅客機市場では「残るのは敗者のみ」と懸念されてもいます。先行き次第では機種のサイズを問わず、ビジネスジェット機生産への影響も皆無と言えません。
HACIも、ホンダジェットより一回り機体サイズの大きい「エシュロン」(11人乗り)のテスト機の製造を2025年に入り始めていますが、トランプ関税がきちんと解決されず決着が長引けば、米国外のビジネスジェット機ユーザーに手控え感が起きることも予想され、エシュロンの受注へ影響が懸念されます。
HACI自体は2006年に設立されたので、航空機メーカーとしては若いといえます。そのため今回のトランプ関税の問題が長期化しないことを願いつつ、今回の問題が将来におけるHACIの経営戦略強化へのノウハウ蓄積になることを願うばかりです。
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
コメント