日本でもおなじみ航空会社「戦闘機もつくってます」実は自衛隊も世話になってます!? “軍民両用”会社が大型受注

韓国が長らく運用してきた軍用ヘリコプターUH-60の近代化改修を実施します。その主契約企業は「大韓航空」。日本では一大エアラインとして有名な同社が、なぜ軍用機の改修を請け負うのでしょうか。

大韓航空が軍用機を改修!? そのワケとは

 韓国で防衛装備品の開発や調達手がける防衛事業庁は2025年4月23日、韓国陸軍と空軍が運用するUH-60「ブラックホーク」ヘリコプターの近代化改修事業の主契約社に、大韓航空を選定したと発表しました。

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韓国陸軍が運用するUH-60(画像:ロッキード・マーチン)。

近代化改修の対象となるのは36機で、操縦席の計器類がデジタル・グラスコクピット化されるほか、通信装置の更新や生存性向上のための装備の追加なども行われる予定です。事業の予算規模は約9613億ウォン(約960億円)と見積もられています。

 陸上自衛隊でも運用されているUH-60は、原型機が1974(昭和49)年に初飛行してから半世紀以上が経過していますが、基本設計が優れていることから、現在でも生産が継続しています。今後も長期に渡って運用していくための改修も各国で進められており、韓国軍がUH-60の近代化改修を行うこと自体は不思議なことではありませんが、「なぜ大韓航空が?」と思う日本人は少なくないのではないかと思います。

 1969(昭和44)年に設立された大韓航空は、韓国最大のエアライン(航空会社)です。日本にも季節便や貨物便を含めて15都市に乗り入れていることから、日本ではエアラインのイメージが強いのですが、同社は1976年に航空機と航空機部品の開発製造や整備を手がける「製造事業部」を立ち上げており、今回韓国軍のUH-60近代化改修事業の主契約者に選定されたのは、この製造事業部から発展した、大韓航空の航空宇宙事業部というわけです。

 設立当初の大韓航空製造事業部は、主に大韓航空で運用する旅客機の部品製造や整備を手がけていましたが、やがて軍用機にも進出。韓国空軍で運用されているF-5戦闘機とF-16戦闘機のライセンス生産も行っています。

 今回のUH-60についても、退役した韓国海軍の分も含めて130機以上のライセンス生産を行っています。大韓航空がUH-60近代化改修事業の主契約社に選定されたのは、ライセンス生産を通じてUH-60の特性を把握しており、どの部分に改修を加えれば、長期に渡って運用できるヘリコプターにできるのかを、競合他社に比べて具体的かつ詳細に提案できたからなのかもしれません。

 韓国空軍の新戦闘機KF-21「ポラメ」の開発と製造を手がける主契約社の座は、ライバルのKAI(Korean Aerospace Industries)に奪われてしまいましたが、UAS(無人航空機システム)の分野で大韓航空は他社をリードしており、韓国軍が導入計画を進めている中型UASの開発と製造は同社が手がけています。

 また、大韓航空の航空宇宙事業部は、航空機のMRO(整備・修理・オーバーホール)事業にも積極的に取り組んでいます。自社の民間航空機や韓国軍の航空機だけでなく、在韓米軍と在日米軍が運用している航空機のMROも手がけており、同社は1978(昭和53)年から2025年5月までの間に、延べ3700機の在韓米軍と在日米軍の航空機のMROを行っています。

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