日本でもおなじみ航空会社「戦闘機もつくってます」実は自衛隊も世話になってます!? “軍民両用”会社が大型受注
韓国が長らく運用してきた軍用ヘリコプターUH-60の近代化改修を実施します。その主契約企業は「大韓航空」。日本では一大エアラインとして有名な同社が、なぜ軍用機の改修を請け負うのでしょうか。
じつは日本も「お世話になってました」って!?
大韓航空の航空宇宙事業部が製造した部品は、実のところ自衛隊機にも使用されています。

韓国空軍は2004(平成16)年から2010年代にかけて、アメリカからF-15K戦闘機を合計61機導入しています。F-15Kの導入にあたってアメリカ政府とボーイングは、韓国がF-15Kの導入に要した費用と同等額の韓国製品の購入や、韓国企業への製造委託などを行う、いわゆる「オフセット契約」を設定していました。
大韓航空の航空宇宙事業部は、そのオフセット契約の一つとして、ボーイングからAH-64D戦闘ヘリコプターの部品の製造を受注。この時期に製造された部品が、陸上自衛隊の運用するAH-64D戦闘ヘリコプターに使われているのです。
防衛省(当時は防衛庁)・陸上自衛隊がAH-64Dの採用を決定した2001(平成13)年の時点で、AH-64Dの世界的需要は一巡しており、大韓航空の航空宇宙事業部はアメリカにAH-64Dの部品製造ラインの閉鎖を求めていました。しかし、防衛庁・陸上自衛隊がAH-64Dの採用を決めたことで、同社は生産ラインの閉鎖を先送りにして、陸上自衛隊機の部品の製造を行っています。
ただ、工業製品のご多分に漏れず、量産効果による価格の低減が見込めなかった部品を使用したことが、陸上自衛隊のAH-64Dの調達価格の高騰と、それによる調達打ち切りに繋がったという側面もあります。
航空機をはじめとする工業製品のサプライチェーンはグローバル化が進んでいます。陸上自衛隊のAH-64Dはあまり芳しくない結果に終わっていますが、今後も自衛隊が導入する国産機やライセンス生産機に、大韓航空の航空宇宙事業部が製造した部品が使用されることは、十分あり得ることだと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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