北朝鮮の駆逐艦もハデに横倒し! 古今東西「進水式あちゃ~事件簿」 日本も複数“やらかした”
北朝鮮で発生した進水式が失敗し、新造の駆逐艦が横倒しになった姿が衛星写真にとらえられました。かつて日本海軍でも、進水式の失敗は複数ありました。
ところで北朝鮮艦は「なに進水」を失敗したのか?
先頃進水に失敗した北朝鮮の崔賢(チェ・ヒョン)級ミサイル駆逐艦は排水量5000トン級で、1番艦と2番艦が2024年に起工、2026年に就役を予定しています。

事故が起こったのは朝鮮半島北東部の清津(チョンジン)造船所で、衛星写真では進水前の船台に設置された船体と、事故後に艦首を船台に残したまま右舷を下に横転した姿が写っていました。事故を起こしたこの崔賢級2番艦は、滑らなかった艦首を軸に振り子の要領で船体が横転したと思われます。
Google Earthの衛星写真を見ると、清津造船所の現場は細い水路で外洋につながった横長の堀になっています。堀は縦向き進水ができる幅はないため、船の進水は横向きで行っていたことが分かります。
なお、1番艦「崔賢」を建造したのは黄海に面した南浦で、2番艦に先立ち4月25日に進水しています。ここは軍の主力造船所といわれており、日本海側の清津造船所は新たな軍の造船所にする計画とされています。
つまり、いままで民間船を建造してきた清津造船所にとって、北朝鮮で最も大型の艦艇である崔賢の進水は、これまでにない経験だったはずです。報道で指摘された技術的な面の問題と経験不足は、横向き進水の方法に関するものと思われます。
船体に穴が開いていたという当初の報道はその後、否定されており、浸水の原因は横転して流入した海水と見られます。しかし、横転によりキール(竜骨)など船体の構造に重大な損傷があれば復旧は難しくなるでしょう。
進水式は「命名および進水式」であり、無事進水したと思われる1番艦「崔賢」は艦名が公表されています。事故を起こした2番艦も進水式で命名されたはずでずが、あらためて進水式をやることになれば、この2番艦は改名されるのかもしれません。北朝鮮当局の発表では、6月末の党中央員会総会までに復旧が言明されています。
最新ニュースでは6月2日に撮影された衛星写真から、横転した船体が “直立に”戻ったと報じられ、船体の引き起こしに成功した模様です。果たして船体を船台に戻し進水式をやり直すのか、今後の動きが注目されます。
Writer: 時実雅信(軍事ライター、編集者、翻訳家)
軍事雑誌や書籍の編集。日本海軍、欧米海軍の艦艇や軍用機、戦史の記事を執筆するとともに、ニュートン・ミリタリーシリーズで、アメリカ空軍戦闘機。F-22ラプター、F-35ライトニングⅡの翻訳本がある。
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