『紅の豚』に出てきそう!? いかにも「古そうな複葉飛行艇」が第二次大戦で引っ張りダコだったワケ「空母にも発着できます!」
海面や湖面など水上でも発着できる性能を持つ飛行機、それが水上機や飛行艇です。水上発着のため大きなフロートを備えていますが、なかには車輪だけでなく着艦フックまで備えて空母の狭い飛行甲板に発着できたものもありました。
陸上でも、海上でも、ときには空母上でも
「ウォーラス」が、ほかの飛行艇と比べて圧倒的に勝っていた部分、それは陸上の飛行場でも、海の上でも、空母の飛行甲板からも、どこへでも降り、そして飛び立てる性能を持っていた点です。

これは、優れた短距離離着陸性能を持っていたからですが、それに加えて胴体に引き込み式の降着装置を備えていたことで可能な芸当でした。また胴体後端には着艦フックも装備していたため、これも空母への着艦が可能な要素のひとつとなっています。
加えて、前述したように巡洋艦や戦艦などが備えるカタパルトから射出することもできました。なので、これら水上戦闘艦からカタパルトで発艦したのち、空母へ直接着艦するなんてこともできたのです。
こうした、場面を選ばない使い勝手の良さと抜群の便利さから「ウォーラス」は第2次世界大戦が始まると偵察、弾着観測、救難、軽輸送、対潜哨戒、傷病兵輸送に加えて、秘密諜報員の潜入や脱出といった特殊任務にまで幅広く用いられました。生産機数は740機と決して多くはありませんが、前出のイギリス、オーストラリアに加え、ニュージーランドやカナダなどでも運用され、好評を博しました。
戦後は、民間に払い下げられた「ウォーラス」が捕鯨母船に搭載されて鯨の群を空から探したり、傷病者空輸の「空飛ぶ救急車」となったりしたほか、観光や遊覧などにも利用されています。
たとえるなら「痒いところに手が届く」。スーパーマリン「ウォーラス」はそんな性格の飛行機だったのかもしれません。
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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