安くしてもダメ「アメ車タレント起用も意味ナシ!」強大な販売力でも無理… 日本で売れなかった伝説のトヨタ車とは
1996年に日本で販売を開始した「キャバリエ」は、GMとトヨタがタッグを組んで日本で販売したモデルでしたが、日米のニーズの違いから販売は低迷。5年ほどで終売しました。この失敗から日本で売れるアメリカ車について考えてみます。
アメ車らしい個性、ほど良いサイズ、価格の安さが日本で成功するための条件か
アメリカ車のみならず輸入車にとって日本市場は厳しく、1972年の統計開始以来、輸入乗用車のシェアが10%を超えたのは1995年の1度だけです。クルマを単なる移動手段として捉えず、一種のステイタスシンボルの要素も欲しがるユーザーの多くは日系ブランド、それも圧倒的な販売力と市場占有率を持つトヨタを選ぶことでしょう。そうした市場にあって輸入車を選ぶ動機は、実用性や経済性ではなく日本車にはない個性とそのブランドが持つ独自の世界観となります。

残念ながら日米のコラボで販売されたトヨタ「キャバリエ」は、アメリカ車らしい力強さや存在感、そして個性を際立たせるデザインがなく、さりとてトヨタブランドの信頼性や品質、経済性などの長所があるわけでもない、なんとも中途半端なクルマとなってしまったきらいがあります。それが、アメリカで乗るには悪くない選択だったコンパクトカーの「キャバリエ」が、日本で受け入れられなかった理由なのでしょう。
翻って考えると、過去に日本でヒットしたアメリカ車、それこそシボレー「カマロ」や「アストロ」、キャデラック「セビル」、フォード「トーラスワゴン」や「エクスプローラー」、ジープ 「チェロキー」などは、全長5m、全幅1.8m前後と、日本で乗るのに不都合のないギリギリのサイズで、なおかつアメリカ車らしい個性を前面に打ち立てたクルマでした。しかも、これらは手頃な価格だったことも日本でヒットした理由でした。
トヨタ「キャバリエ」のように、車体サイズや排気量が小さく価格が安いだけではわざわざアメリカ車を選ぶ理由になりませんし、アメリカで人気の大型SUVでは狭い日本の道を運転するのに持て余してしまいます。
大き過ぎず小さ過ぎず、アメリカ車らしい存在感と使い勝手との折衷によるジャストフィットなサイズ、V8エンジンに代表される迫力と個性、そして右ハンドル化などのローカライズとリーズナブルな価格設定……。現在、販売が堅調な「ジープ」ブランドの成功を考えると、これこそが日本で売れるアメリカ車の条件となるのではないでしょうか。
そのことを「日本でアメリカ車は売れない」との不満を持つドナルド・トランプ米大統領に伝えたいところです。
Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)
「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に
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