JR東海の初代「新快速」311系ついに引退 東海道線をガラッと変えた? “名古屋の俊足”がもたらしたもの

JR東海の311系電車が2025年6月末限りで引退します。今では当たり前の設備や懐かしい設備、そして東海道本線の名古屋地区の輸送サービス改善など、311系の特徴や果たした役割を振り返ります。

311系がもたらした利便性向上

 311系は、先に触れた客室設備のレベルアップに加え、最高速度120km/hへの向上も行われました。従来より所要時間が1~2分短縮され、名古屋~岡崎間は29分、名古屋~岐阜間は18分となったのです。

 1989(平成元)年7月9日のダイヤ改正の段階で、311系は5編成20両が導入。1990(平成2)年3月のダイヤ改正ではさらに8編成が追加されて、新快速は311系に統一されました。翌年も311系が2編成増備されて新快速の運行時間帯が拡大し、最終的には15編成60両がそろいました。311系の増備によって、東海道本線の利便性向上が図られたのです。

 また、観光輸送の臨時列車にも311系が使われました。中央西線の名古屋~塩尻間を結んだ「ナイスホリデー木曽路」や、大垣~飯田間など飯田線経由で運転された「ナイスホリデー天竜・奥三河」などに使用されたことがあります。

 さらに、「ナイスホリデー近江路」では、米原を経由してJR西日本のエリアにも入り、琵琶湖の東側にある北陸本線の長浜(滋賀県長浜市)まで乗り入れたこともありました。

 1999(平成11)年には、JR東海の名古屋・静岡地区の地域輸送で主力車両として使用されている313系が登場します。313系は、311系に採用されたオレンジのラインのほか、名古屋地区では転換クロスシートの車内設備も継承されました。

 313系が大量に導入されると、311系は新快速の役割を譲り、東海道本線の普通列車を主体に使用されました。このほか、武豊線が電化されたことで、2015(平成27)年3月以降は武豊まで直通する列車にも使用されました。

 後継の新型車両315系が登場したことで、311系は2022年から廃車が進められています。2025年5月末からは最後の2編成で車内外に装飾が施され、ヘッドマークの取り付けなどが行われました。315系もオレンジのラインが継承されていますが、車内の座席配置はロングシートとなり、車内の表示器は液晶画面に進化しています。

 311系は東海道本線の浜松~米原間で使用された時期が長く、静岡まで乗り入れたこともありました。名古屋地区で使用された車両でしたが、JR各線の普通列車が乗り放題となる「青春18きっぷ」を利用して東海道本線を乗り継いで旅行すると、浜松~豊橋間や大垣~米原間で311系と遭遇する機会も多くありました。

 1989年の登場から36年間、東海道本線の利便性向上に貢献し、名古屋地区の通勤通学輸送や「青春18きっぷ」のお供として、多くの人々に利用された車両が役目を終えることになります。

【さよなら】311系の車内とLED案内表示器を見る(写真)

Writer:

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。

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