「神社のご神木が車内に鎮座」どういうこと!? 予約率9割超え、でも“座席は売らない”人気列車

登場から1年強がたったJR九州の観光列車「かんぱち・いちろく」は、予約が取りにくい人気列車です。乗車は旅行商品になっており、手軽に乗れるようになるとの甘い期待を抱いてはいけないようです。

「列車内ご神木」の不思議なパワー?

 苦労の甲斐があり、列車内に誕生したご神木だったという”パワースポット”。そのカウンターの上には土産品のほか、沿線の名産品も展示されており「特急『かんぱち』が出発する時には博多や久留米の名産品だけを展示し、進んでいくと(客室乗務員が)沿線の名産品を1個、2個、3個とカウンター上に増やしていきます」(伊藤さん)。こうして、乗客は追加された名産品を確認しようと、何度も足を運んでくれるそうです。

 また、車内で振る舞われる福岡、大分両県の食材を生かしたこだわりの弁当も大きな売りです。訪れた日の弁当を調理した福岡市の和食店「味 竹林」の竹林 譲さんは「今が旬の大分のハモや、刺身のタイ、(クロマグロの幼魚)ヨコワ、アオリイカを入れ、夏の季節感を出すために刻んだミョウガを載せました」と解説しました。乗客は容器のふたを開けると、見た目も鮮やかな料理に感嘆の声を挙げるそうです。

「かんぱち・いちろく」は全座席を昼食付きの旅行商品として販売しており、大人1人の旅行代金は1万8000~2万8000円かかります。

 筆者は見学前には、乗車券と特急券、グリーン券を買えば乗れる座席販売も始まると予想していました。しかし、これがおそらく大ハズレだったことが判明しました。

 なぜなら車内は、それぞれのテーブルに番号が付けられているだけで、各座席の番号は割り振られおらず、座席販売をできないためです。旅行商品限定でも予約が好調なのを踏まえると、JR九州が割安な座席販売に乗り出す動機は見当たりません。

 大分、福岡両県の魅力がたくさん詰まった「かんぱち・いちろく」だけに、JR九州は弁当も含めた車内体験を「五感で存分に味わってほしい」(伊藤さん)という思いを込めていました。

【なんという姿!】これが列車内に鎮座した「ご神木」です(写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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