消滅しかけた「2人乗り戦闘機」が復権? 変化しつつあるパイロットの役割 “もう一人がいないと酷”なワケとは

かつてはテクノロジーの進化により廃れてしまった「複座型戦闘機」、じつは皮肉にもさらなるテクノロジーの進化によって各国の次世代戦闘機において「復権」しつつあるといいます。これからの複座型戦闘機の役割とは、一体何なのでしょうか。

韓国も中国も「複座型」用意!

 筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は2022年7月にイギリスで開催されたファンボローエアショーの会場で、KAIにKF-21の複座型を開発する意図を担当者に聞いてみました。

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フランスやスウェーデンなどが2000年代後半から2010年代にかけて研究していた戦闘用UAS「ニューロン」の実大モックアップ(竹内修撮影)。

 いわく、「試作機の複座型は基幹パイロットの養成と、国内外の要人が試乗するためのもので、CCAの統御能力は与えられていない」とのこと。

 しかしその上で、「KAIと韓国空軍はKF-21が複数のCCAを統御する戦闘コンセプトの研究開発を進めている。このコンセプトが実用化された場合、単座型のKF-21のパイロット1人が複数のCCAを統御するのは荷が重いので、量産機でCCAの統御を主任務とする複座型が開発される可能性は高いのではないか」との見解を示しました。

「有人機+無人機」でパイロットの負担はどうなる?

 中国は、第5世代戦闘機に分類されるJ-20戦闘機の複座型、J-20Sを実用化しています。2024年12月26日に初めてその存在が明らかになった第6世代戦闘機と言われるJ-36も、複座型機だと推定されています。中国が複座型戦闘機の新規開発に取り組んでいる本当の理由は不明ですが、ボーイングやKAIと同様、複座型戦闘機の方がCCAの統御に有効だと考えているという報道もあります。

 フランスをはじめとするヨーロッパ諸国は、2000年代末期から2010年代初頭にかけて、戦闘用UAS「ニューロン」の研究開発を行っていました。当時の技術ではUASが有人航空機と協調飛行をすることさえ困難だと考えられていたため、ダッソー「ラファール」やサーブ「グリペン」などの戦闘機の複座型の後席に登場するオペレーターが、1機のニューロンを統御するコンセプトが打ち出されていました。

 しかしその後、UAS技術は飛躍的に進化しており、現在では有人航空機に随伴飛行するのはもちろん、おそらく攻撃もAI(人工知能)に依存できるレベルに達しているものと思われます。

 ただUASの普及に伴い、主に自由主義陣営諸国では、人命を奪う可能性のある攻撃の判断だけは人間がしなければならない、いわゆる「マン・イン・ザ・ループ」という概念が定着しつつあります。

 1機のCCAの攻撃判断を有人戦闘機のパイロット1名で行うことはそれほど難しくないと筆者は思いますが、「マン・イン・ザ・ループ」の概念のなかでは、随伴するCCAの数が多ければ多いほど、パイロットの負担は大きくなると考えられます。

 そのため、パイロットの負担を軽減するために、CCAの統御をオペレーターが同乗する複座型戦闘機を開発するのは、合理的な考え方ではあると筆者は思います。

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Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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