日本有数の「私鉄王国」揺らぐ 「富山地方鉄道」一部廃止案 乗ってわかった“ボトルネック”と代替ルート
地方私鉄では日本有数の路線網をもつ「富山地方鉄道」の鉄道線が6年連続の赤字に陥り、一部廃止案が浮上しています。実際に乗ってみると、確かにボトルネックとなっている箇所や、代替案も見えてきました。
6年連続の赤字に苦しむ富山地方鉄道
世界レベルの山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」や宇奈月温泉、黒部峡谷といった景勝地を沿線に有し、かつての首都圏や関西の人気車両が現役で走る富山県の私鉄、富山地方鉄道。JR富山駅と隣接する電鉄富山と近郊と結ぶ電車が中心の鉄道線が、多額の赤字を出しており、富山県と沿線7市町村が設置した富山地鉄鉄道線の「あり方検討会」が支援策や経営再構築策を検討しています。

富山地鉄の2024年度の決算は、本業の損益を示す営業損益が約4億2500万円の赤字となり、赤字は6年連続。なかでも鉄道事業で約8億4000万円の営業赤字を計上したのが足を引っ張っており、中田邦彦社長は「鉄道事業の在り方というものを早急に決めて、収支の改善を図っていきたい」と強調しました。
鉄道線と軌道線(路面電車)あわせて100kmを超える路線網を富山地鉄が運営する富山県は、日本有数の「私鉄王国」です。うち、総延長が93.2kmの鉄道線(富山港線を含まず)には、電鉄富山―宇奈月温泉の本線(53.3km)、本線の寺田から分岐して立山と結ぶ立山線(24.2km)、本線の稲荷町と立山線の岩峅寺(いわくらじ)をつなぐ不二越・上滝線(15.7km)があります。
富山地鉄によると、うち採算が取れるのは通勤通学輸送が多い本線の電鉄富山―上市間、立山線の寺田―五百石間、不二越・上滝線の稲荷町―月岡間にとどまり、大半を占める残りの区間は赤字です。
ただ、赤字区間は立山山麓や黒部峡谷などへ向かう観光輸送で重要な役割を担っているのも事実です。西武鉄道の特急「レッドアロー」旧5000系(現・16010形)や、京阪電気鉄道の「テレビカー」として人気だった初代3000系(現・10030形)、鉄道友の会のローレル賞を1980年に受けた自社発注車両14760形といった車両も魅力的です。
筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が鉄道線の全線に乗ったところ、効率的な運行を阻む「ボトルネック」の存在が見えてきました。「あり方検討会」での選択肢などに基づいて再建方法を考えました。
まず富山地鉄の本線についてです。2025年7月1日、本線の赤字区間である上市―宇奈月温泉間について考える「あり方検討会」の分科会で、沿線自治体の事務局は一部区間の廃止を含めた参考例を示しました。
選択肢に盛り込まれたのは、第三セクター鉄道「あいの風とやま鉄道」(旧JR北陸本線)と並行する「滑川―新魚津間の廃止」、並行区間以外も含めた「滑川―宇奈月温泉間の廃止」、そして「上市―新魚津間の廃止」などです。
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