日本有数の「私鉄王国」揺らぐ 「富山地方鉄道」一部廃止案 乗ってわかった“ボトルネック”と代替ルート
地方私鉄では日本有数の路線網をもつ「富山地方鉄道」の鉄道線が6年連続の赤字に陥り、一部廃止案が浮上しています。実際に乗ってみると、確かにボトルネックとなっている箇所や、代替案も見えてきました。
地鉄22駅 vs あい鉄5駅の「並行区間」
筆者が本線を利用したところ、2つのボトルネックによる問題を実感しました。

1つは本線で電鉄富山から宇奈月温泉へ各駅停車で向かうのに、途中の新魚津まで約1時間かかること。「あいの風とやま鉄道」の競合区間(富山―魚津)は25分なので、その2倍超です。接続が良い場合には、この区間では本数がずっと多い「あいの風とやま鉄道」に乗車し、新魚津―宇奈月温泉間は富山地鉄を利用した方が時間短縮になります。
理由は3つあり、1つは電鉄富山―新魚津間の距離は30.2kmと、「あいの風とやま鉄道」の25.5kmより長いため。2つ目は途中駅の数がそれぞれ22駅、5駅と大きな違いがあるためです。残る1点は、富山地鉄は途中の上市駅が頭端式2面3線のプラットホームになっているため全ての電車が停車し、進行方向を変えるスイッチバック運転によるタイムロスが生じるためです。
よって、事務局が参考例とした並行区間の「滑川―新魚津間廃止」パターン、すなわち富山と宇奈月温泉の移動に「あいの風とやま鉄道」と富山地鉄を併用してもらうことは検討に値しそうです。
ただその場合には、富山地鉄の新魚津の西隣にある電鉄魚津は乗降客数が比較的多く、富山県魚津総合庁舎に近いなど利便性が高いため、同じ位置に「あいの風とやま鉄道」の新駅を設置することが求められます。
特急、もう少し延長してもらえると…
もう一つのボトルネックは、本線だけを通る特急の運行区間が電鉄黒部―宇奈月温泉間にとどまり、使い勝手があまり良くないことです。これは途中の新黒部と隣接する北陸新幹線の黒部宇奈月温泉での乗り換え利用に主眼を置いているためで、筆者が宇奈月温泉発電鉄黒部行きの特急に乗った際には、運転士が新黒部停車中に車内を巡回して「北陸新幹線をご利用の方はここでお降りください」と声をかけていました。
運転士の心遣いには頭が下がる半面、筆者は「特急を新魚津まで運転すればいいのに」と考えました。というのも、黒部宇奈月温泉に止まる新幹線は「はくたか」の一部だけで、宇奈月温泉へ向かう旅行者の需要を十分に満たせないためです。
速達タイプの新幹線「かがやき」で富山に入ったり、富山市に宿泊したりする旅行者のためにも、富山地鉄の特急運行区間を新魚津―宇奈月温泉間に延長すれば、新魚津に隣接する魚津を通る「あいの風とやま鉄道」と乗り継いで移動しやすくなります。
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