トランプ関税の交渉カード「造船協力」そんな余裕はありません!? 日本の造船「絶好調に見えるだけ」の現在地

日本の造船業は4年連続で受注量1100万総トン超を記録し、一時期の危機的状況から息を吹き返しました。しかし、世界の需要の多くは中国・韓国が握り、相対的に米国は壊滅的で日韓に支援を求めています。日本はどう応えるのでしょうか。

日本は“余裕しゃくしゃく”なワケがない

 宮武氏は「中国があれだけの受注を取り、大口を開けてクジラのように全てを丸のみしていくような中で、焦りを感じなければならないというのは、行政もそうだし造船所も同じだと思う」と、さらに危機感をにじませます。

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韓国のハンファグループが買収した米国フィリー造船所で建造中の大型船(画像:ハンファ・ジャパン)。

 そのうえで、自民党の経済安全保障推進本部と海運・造船対策特別委員会との合同会議の中で「経済安保の視点からも造船を支援していかなければならないという話が非常に大きく出ている」と話し、「船は経済安保の中で極めて重要で、それを支える造船は日本にとってなければならない産業だ。経済安保の文脈で何ができるか、何をしなければならないのか、一生懸命考えていきたい」と強調しました。

 日本造船工業会の会長で今治造船の社長を務める檜垣幸人氏は、日本の造船シェアを20%まで回復することを目標として掲げているほか、常石造船は客船建造に参入することを計画しており、政府の後押しも受けながら業界全体で日本の造船業活性化に向けた取り組みが期待されています。

造船ほぼ“壊滅”の米国、「助けて!」の声

 一方で、トランプ政権との関税引き下げ交渉のカードとしてたびたび話題にあがる米国の造船能力はどれぐらいかというと、年間建造量は3万782総トンで、シェア率はわずか0.04%に過ぎません。これは建造量3万7346総トンでシェア率0.05%の台湾と同規模で、建造量9万7695総トンで同0.14%のロシアよりも少ない数字です。

 そもそも2022年から2024年にかけて米国造船所での商船受注隻数は、3600TEU級コンテナ船3隻のみ。こうした壊滅的な状況を打開すべく、トランプ政権以前からアメリカは日本や韓国に米国造船所への投資を呼びかけています。

 現時点で米国造船業への投資に積極的なのは韓国企業で、例えば大手財閥系のハンファグループはハンファシステムズとハンファオーシャンを通じて、商船ヤードのフィリー造船所を買収し「ハンファ・フィリー造船所」として傘下に収めています。HD現代重工業もタンパ・シップ(フロリダ州タンパ)で中型LNG(液化天然ガス)2元燃料(DF)コンテナ船の建造を目指し、米エジソン・チョウエスト・オフショア(ECO)グループと基本合意書(MOU)を結びました。

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