トランプ関税の交渉カード「造船協力」そんな余裕はありません!? 日本の造船「絶好調に見えるだけ」の現在地

日本の造船業は4年連続で受注量1100万総トン超を記録し、一時期の危機的状況から息を吹き返しました。しかし、世界の需要の多くは中国・韓国が握り、相対的に米国は壊滅的で日韓に支援を求めています。日本はどう応えるのでしょうか。

日本の造船、完全復活? でも「安穏としてはいられない状況」

「我々自身が“米国”にならないよう、もっと磨きをかけて、将来明るい造船業へなんとか繋げていきたい」――2025年6月に都内で行われた日本中小型造船工業会の総会後懇親会であいさつに立った田中敬二会長(福岡造船会長)が、こう述べました。

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日本の造船シェアトップ、今治造船の今治工場(深水千翔撮影)。

 日本の造船業は一時期の危機的な状況から脱しています。日本船舶輸出組合によると2024年の輸出船契約実績は1116万総トンとなっており、2021年から4年連続で受注量1100万総トン超を記録しました。手持ち工事量は3年以上を確保しており、商談は2029年以降納期のものが中心となっています。このため旺盛な新造船需要に対して建造船台が不足するような状況です。

 これに対して国土交通省海事局の宮武宜史局長(当時)は「皆さんは手持ち工事量をそれなりに確保して一息ついていると思われるが、将来を見越すと決して安穏としてはいられない状況だと理解している。行政も積極的にテコ入れしていくべき場面だ」と話しました。

中国が世界シェアの55%を占める圧倒的な存在感

 国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2024年の新造船竣工量は世界全体で7169万総トン。この中で圧倒的な存在感を見せているのが中国で、年間建造量は3912万総トン、世界シェア率はなんと約55%を誇っています。

 続く韓国が2009万総トンで同28%、そして日本が900万総トンで同13%となっており、東アジアの3か国で全世界の9割の船が作られていることがわかります。

 対して欧州のシェア率は低いです。比較的建造量が多いイタリアでも46万総トンで0.64%、フランスが29万総トンで0.4%、ドイツが19万総トンで0.26%となっています。とはいえ、伊フィンカンティエリ、仏アトランティーク造船所、独マイヤー・ベルフトといった大型クルーズ船の建造ヤードを抱えているのは強みです。

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