ポルシェはもはやSUVメーカー? この変化、スポーツカーの未来に意義があるワケ
日本メーカーによる買収話もいまは昔 今後、ポルシェの動向に注意すべきワケ
「カイエン」の成功をきっかけに、ポルシェ社は右肩あがりの成長を始めます。2005(平成17)年には10億ユーロ(約1130億円)の巨費を投じ、4ドア・セダン「パナメーラ」の開発をスタート。「カイエン」の成功が2ドアスポーツカーからの脱却をうながし、またそうした巨額な開発資金のねん出を可能としたことは間違いないでしょう。
同社は2007(平成19)年、年間総生産台数が10万台を突破し、2009(平成21)年には待望のセダンである「パナメーラ」を発売。さらに2014(平成26)年には、ミディアムサイズのSUVである「マカン」を投入。それぞれヒットさせます。
振り返ってみれば、スポーツカー専業だった1980年代に年間販売台数が5万台規模であったポルシェ社は、SUVやセダンに商品ラインナップを広げることで、いまや4倍以上の20万台を売り上げるメーカーに成長しました。1990年代初頭の経営不振のときには「日系メーカーに買収されるのではないか」といううわさが流れたのも、いまや懐かしい昔語りとなっています。そうした「いま」も、スポーツカーからの脱却を図った「カイエン」の挑戦があるからこそではないでしょうか。
そんなポルシェ社の挑戦と成功は、ほかのブランドへの大きな刺激となりました。いまとなっては「ベントレー」をはじめ「マセラティ」「ジャガー」といったスポーティなイメージの強いプレミアムブランドも続々とSUVへ参入を始めています。
2015年の「フランクフルトモーターショー」でポルシェ社は、電気自動車のコンセプトカー「ミッションE」を発表しました。同社はハイブリッドの採用も積極的ですが、このコンセプトカーは動力に電気のみを使用する完全な電気自動車で、かつ、スポーツカーとしての走りと実用性を兼ね備える「EVスポーツカー」を標榜しています。スポーツカー専業からの脱却を図り、成功したことが、「ポルシェのスポーツカー」を新たなステージへ進化させる挑戦をも可能にしているというわけです。
もし、こうしたポルシェ社による電動化への挑戦が成功裏に終われば、「カイエン」と同様にほかのプレミアムブランドも追従する可能性があります。これからのスポーティブランドの未来を考えるうえで、「ポルシェ」の電動化への動きは注目すべきものでしょう。
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
フェラーリ社はレース活動のためにロードカーを売ってきているのだから、ある意味でフェラーリというブランド(クルマ・アパレル等)を買うということは、購買者の意識はさておきフェラーリ社にとってはレース活動支援のための行為と言えまいか。
ならば、ポルシェ社がSUV製造者になったと考えるよりも、「最善である最新のRRポルシェ」の開発費をSUVを売って賄ってくれていると考えておいたほうが楽しい。