ミサイル担いだ無人ボート「ロシアが誇る万能戦闘機」を相次ぎ撃墜! 日本にとっても脅威なワケ もはや戦闘機の逃げ場はないのか?
ウクライナの無人艇が、ロシア戦闘機をミサイルで撃墜しました。これは従来の無人艇が対艦攻撃程度しか使えなかったのが、対空兵器としても使えるまでに進化したということ。ただ、その脅威は日本にとっても他人事ではないようです。
日本近海でも起きるか?
かつて航空機は水上艦を一方的に攻撃できる能力を有していましたが、艦対空ミサイルの普及により現代では圧倒的に水上艦の方が強力であり、そのため海上においても地上同様に航空機側は超低空飛行から長射程の空対艦ミサイルを使用して攻撃するという戦い方が主流となっていました。

AIM-9の射程はせいぜい10km以下ですが、「マグラV7」のようなUSVは通常の水上艦よりもずっと安価なので大量展開が可能であり、例えば10隻を10km間隔で配置すれば、100kmに及ぶ防空の壁を低空域に構築することが理論上は可能になります。
この技術的な変化は、ウクライナ・黒海だけの問題ではありません。東アジアの海空域、とりわけ台湾海峡や南シナ海、東シナ海といった日本の周辺海域においても、今後の航空戦環境を一変させる可能性を孕んでいます。
広い海上においては水上艦を攻撃するにも、潜水艦を探知し攻撃するのにも航空機の運用が欠かせません。しかし対空能力を持ったUSVによってその運用が著しく阻害されてしまうことが考えられます。
中国海軍はすでに数百隻のUSV開発に注力しており、仮にAIM-9に準じた赤外線追尾型の撃ち放しミサイルを搭載し、海上に無数にばら撒いた場合、台湾や日本周辺の空域においてもウクライナと同様、戦闘機の超低空飛行に大きな制限がかかるでしょう。これに対抗するためには海上自衛隊にも同種のUSVを大量に配備し、同様に相手の航空活動を制限させる必要があると考えられます。
対空ミサイル搭載型USVは「マグラV7」が戦果をあげる以前から存在しており、例えばウクライナでは「サイドワインダー」とほぼ同等の性能を持つロシア製R-73空対空ミサイルを搭載した「シードラゴン」が存在しました。同艇は、2024年12月にMi-8輸送ヘリコプターを撃墜した事例があります。
こうしたことを鑑みると、「マグラV7」のような対空ミサイルを搭載したUSVが今後、世界中で急速に拡散することは、ほぼ間違いないといえるでしょう。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
太平洋戦争の直前に帝国陸軍の将官は騎馬部隊による白兵戦、海軍の将官は戦艦艦隊の砲撃戦を重要視したが、実際にはまったく意味がなかった。現在、空母だ戦闘機だといっているのは同じかもしれない。