電車の足回りから「妙な光が出てる…!」 特殊能力をもった“フツーの電車”増加中 その正体とは?
走ってくる電車の前照灯でも、車窓でもない「足回り」から光線を放っている車両が出現しています。照らしているのには、確固たる理由がありました。
JR九州にも「お医者さん電車」ただし、ややこしい
同じように営業車両へ機器を取り付けることで検査業務を効率化した先例には、JR九州が通勤用電車811系の一部を改造して2020年4月に実用化した検測装置搭載編成「RED EYE(レッドアイ)」があります。4両編成の811系電車2編成が「RED EYE」となり、鹿児島本線門司港(北九州市)~八代(熊本県八代市)間などで検査に使われるようになりました。

2編成とも備えている「列車巡視支援システム」は、先頭部に搭載したカメラで撮影するなどしてデータを送ることができ、線路内の支障物の有無や、保守の必要性などを効率的に判断できるようにしました。
これによって工務系の社員が乗務員室に添乗し、目視で確認する手間が省けるようになりました。また、走行中の車両から撮影する効率化により、JR九州は「点検できる頻度が高まり、品質向上を図ることができた」と説明しています。
また、「RED EYE」のうち1編成には「電車線路モニタリング装置」も装備。屋根上に4K対応のカメラを8台載せ、架線や、電気を供給する設備を走行中に撮影した動画データを作業員が事務所で確認して検査できるようにしました。JR九州は作業員が線路沿いを歩いて目視検査をする従来の方法より省力化できたと説明しており、夏の猛暑などに屋外で検査をする作業員の負担が軽減されたのは長足の進歩と言えます。
811系「RED EYE」を手っ取り早く見分ける方法は、先頭部を確認することです。正面から見た右側に赤文字で「RED EYE」と明記されています。
また、「RED EYE」の導入は、座席を転換式クロスシートからロングシートへ交換するなどのリニューアル工事と合わせて実施されました。一般的なリニューアル編成は先頭部の貫通扉に通勤列車の英語「COMMUTER TRAIN」の頭文字を取った「CT」が青地に白文字で書かれているのに対し、「RED EYE」は「CT」を赤地に白文字で記しています。
筆者が2020年に目撃したのは電車線路モニタリング装置を搭載した編成で、屋根上のカメラで撮影しやすいように架線などをライトで照らしていました。
一方、同じJR九州でもややこしいのは2023年にお目見えした「BIG EYE(ビッグアイ)」は検測車で、営業運転には使われていないということです。輪をかけてややこしいのは、もともとは営業車両として使われていたという点。旅客用のディーゼル車両キハ220形が20年7月豪雨で被災し、改修して検測車に生まれ変わりました。もっとも、列車の安全運行が守られるように鉄道設備をしっかりと監視する「EYE(目)」の役割を果たしており、縁の下を支える力持ちとして活躍ぶりが注目されているのはどちらも同じです。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
821系も屋根上に架線を照らすライトが付いてる編成があるけど、あれは検測機器は積んでないのかな?