「暑すぎて」なぜ列車が運転見合わせに? 全国で「もうお手上げ」状態が相次ぐワケ 下手すりゃ冬まで影響する!?
記録的な猛暑により、鉄道の運転見合わせが相次いでいます。なぜ暑いと電車は止まるのか、その理由をレールの仕組みから解説します。
「もうお手上げ」にならざるを得ない理由
炎天下でレール温度を測り監視を続けるのは大変な作業です。また、対処が必要であれば列車が運行しない夜間に、レールをずらして遊間を調整したり、砕石を足したり、ロングレールの切断・溶接を伴う設定替えなどを行います。

レールの隙間を開けすぎた場合、冬になって温度が下がるとレールが縮み破断してしまう恐れもあるので、微妙な調整です。こうして地道な作業で安全は守られています。
上がりすぎたレールの温度を散水や氷で冷やすこともありますが、日射が続くとなかなか下がってくれません。こうなるとお手上げで、陽が陰り温度が下がるまで待つしかありません。できれば運行を止めたくないのですが、安全が最優先です。
では、「もっと頑丈にレールを固定したら良いのでは?」と思われるかもしれません。しかし、頑丈にするとコストに跳ね返ります。レールや枕木を重くするために地盤の抗力を上げる必要が出て、大規模な工事になる場合もあります。なので、止まったら困る重要な路線は強化して、そうでない路線は環境に応じて動かすという考えになります。
冷房の効いた電車で快適に移動できる影には、炎天下や深夜に人知れず働く多くの鉄道マンがいることを思い出していただけると嬉しいです。
Writer: 山田和昭(日本鉄道マーケティング代表、元若桜鉄道社長)
1987年早大理工卒。若桜鉄道の公募社長として経営再建に取り組んだほか、近江鉄道の上下分離の推進、由利高原鉄道、定期航路 津エアポートラインに携わる。現在、日本鉄道マーケティング代表として鉄道の再生支援・講演・執筆、物流改革等を行う。
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