「海の化け物だ、見てはいけない…」 誰にも知られないはずの「原潜世界一周ミッション」を“見てしまった男”の末路

1960年、アメリカ海軍の原子力潜水艦USSトライトンは、世界初となる潜航状態での世界一周を成し遂げました。しかしその極秘任務の最中、太平洋の波間で思いがけない「目撃者」と遭遇していたのです。

1億ドルの潜水艦とカヌーの“にらめっこ”

 通常、潜水艦は潜望鏡を上げる時は発見されないよう、また、事故防止のため海上の様子には細心の注意を払います。しかし、当時最先端のセンサーでも小型の手漕ぎカヌーは検知できなかったのです。

「滑稽な状況だ。片側には、水中の異様な物体を好奇心のこもった視線で見つめる無表情なアジア人がいる。もう片側には、金と科学で調達できるあらゆる技術の最新技術を装備して、必死の集中力で見ているアメリカ海軍士官がいる。潜望鏡の片側には、屈強な腕で推進するアウトリガーカヌー。もう片側には、1億ドルを投じて建造された世界最新、最大、最強の原子力推進潜水艦が歴史的な航海に出ている。私と彼の間には、なんと深い淵が、なんと何世紀にもわたる科学の発展が横たわっていることか!」

 艦長のエドワード・L・ビーチ・ジュニア大佐は、この潜望鏡を通した“滑稽なにらめっこ”を航海日誌に記しています。

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世界初の潜水世界一周の後、ナショナル・プレス・クラブで記者会見するUSSトライトンの艦長エドワード・L・ビーチ・ジュニア海軍大佐(アメリカ海軍)

ギネス記録とともに「カヌー遭遇」も記録される

 トライトンは民間人に“発見”されるという一幕もありましたが、4月25日に出発点のセントピーターアンドポール岩礁に到達し、世界一周任務を達成しました。所要時間は60日と21時間。無寄港・無補給での航海はギネス世界記録にも登録され、アメリカの潜水艦による核戦略の基礎となる膨大な海洋データを収集することにも成功しました。

 また、カヌーとの遭遇劇も公式記録に残され、海がどれほど予測不能で油断ならない場所であるかを伝えています。

 しかし、そのカヌーに乗っていた漁師は何者だったのでしょうか。実はトライトンに乗り組んでいたナショナルジオグラフィック誌の写真家ジョセフ・ベイラー・ロバーツが潜望鏡越しにカヌーを撮影していました。

【原潜vs.カヌー】潜望鏡越しに見えた手漕ぎカヌーの漁師(当時の写真)

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