よりにもよってお前が…!? 故障のSLと交代「泣く子も黙る“死神”機関車」とは? JRは「払い戻します」と謝罪
JR東日本高崎支社の名物となっているSL列車は2025年夏のシーズン初日にSLが故障し、途中駅で運休して出ばなをくじかれました。一部日程の代役として緊急登板したのは、なんと鉄道ファンから「死神」と恐れられている電気機関車でした。
じつは余命わずかな“死神”
高崎から1時間余りで横川に到着したEF64は、上毛三山の1つ妙義山などを望む風景へ見事に溶け込んでいました。

GVが牽引した往路も沿線にはカメラを持った人たちが集まりましたが、EF64が引っ張った帰路は数倍の人数が繰り出し、デジタル一眼カメラが砲台のように並んでいました。数々の車両を“墓場”へ導いて「死神」の汚名を着せられた悪役は、実は注目度の高い「愛されキャラ」であることが浮き彫りになりました。
しかしながら、皮肉なことに他の車両を終焉へと導いてきた“死神三兄弟”も自身の「余命」が残りわずかとなっています。交直流事業用電車E493系が後を継ぎ、「死神」と呼ばれる3両は廃車になる予定です。
ただ、JR東日本の関係筋は「C61形20号機が検査から出場するにはかなりの時間を要する」と説明。D51については大宮車両センターで修繕する場合でも「C61形20号機と並行で作業するのは不可能なため、C61形20号機の検査完了後になる」と指摘しました。
例年ならばJR東日本高崎支社は秋の行楽シーズンにもSL列車を多く運行し、沿線の観光業の盛り上げに一役買っています。高崎―水上間だけを運転すればGV-E197系のみで牽引できますが、EF64の代走列車の乗客からは「GVの代走では乗りに来ない」と聞きました。集客力でSLに歯が立たないのは自明です。
これに対し、「『死神』と呼ばれていても、乗客の皆さまは安全に送り届ける」というEF64形1031号機が持つストーリー性は抜群で、国鉄時代から活躍している希少性もあってSL負けず劣らずの人気ぶりを見せつけました。
そこで、2025年秋に再び降臨させれば、二匹目のどじょうを狙えるのは請け合いです。ひいてはEF64を“バックアップ要員”として存続させれば、重要な観光資源であるSLの事業継続計画(BCP)に資することも期待されます。勾配区間で活躍したELとはいえ、引退撤回の願望は高望みかもしれませんが。
※一部修正しました(8/13)
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
「EF64は、1997年の北陸新幹線の長野開業で廃止された信越本線横川―軽井沢(長野県軽井沢町)間で、急勾配の碓氷峠を通る列車の補助機関車を務めていました。」
上記の内容に誤りがあるので、修正して下さい。
「鉄旅オブザイヤー審査員」とは、とても思えないレベルの間違いかと。
ご指摘ありがとうございます。
記事を修正いたしました。
碓氷峠の補助機関車はEF63であって、EF64じゃないですよ。しかも1000番代は元々は上越線用ですし。
ご指摘ありがとうございます。
記事を修正いたしました。