こんなところにも「クルマの墓場」!? なぜ無くならない不法な“置き去り” 撤去をためらう根本理由
クルマが相次いで遺棄され、「クルマの墓場」状態となっている場所が各地で見られます。公共的・経済的な損失だけでなく、治安の悪化なども招く問題です。なぜ、クルマの墓場はなくならないのでしょうか。
地方でも見られる「クルマの墓場」
このようなクルマの遺棄は、一部の地方都市でも問題となっています。人口密度が比較的高く、かつクルマを目立たずに遺棄できる場所があるといった条件が揃ったところでは、都内と同じくクルマの遺棄が起きやすいのです。

たとえば、管理者が常駐しない公共の無料駐車場が比較的充実している沖縄では、一般のクルマに紛れて遺棄したいクルマを停めることが容易です。そのため、遺棄されたクルマの “墓場”になっている駐車場もあります。
こうしたクルマの遺棄は、いくつかの問題を生じさせることになります。
まず、遺棄されたクルマにより、ほかに利用のできないスペースが生まれることです。たとえば路上に遺棄されたクルマがあれば、そこは道路としての利用ができなくなります。時間貸し駐車場であれば、経済的なダメージも深刻です。遺棄したクルマの持ち主が駐車料金を支払わない限り、運営会社はそこの区画が生み出す収益が得られません。
そして治安上の不安が増すことも、重要なポイントです。
放置車両は“放置車両とわかった段階”で、パーツ泥棒の恰好のターゲットとなります。またドアがロックされていない放置車両は、車内が家電製品や家庭ゴミの不法投棄の場所として利用されやすくなります。さらには愉快犯による放火でクルマが燃やされ、近隣に被害が及ぶ可能性もあるのです。
こうした小さな治安の乱れは、“割れ窓理論”が示すとおり、放置すればその地域全体の犯罪発生率の増加にもつながりかねません。
撤去は“かなり根気が要る”ワケ
こうした課題があるにもかかわらず、遺棄されたクルマの撤去が進まない理由は、その手続きの煩雑さと費用です。
日本の法律では、たとえ公道や他人の土地に遺棄されたクルマであっても、原則として所有者に断りなく撤去することはできません。そのため、撤去にはまず、所有者の特定が必要になります。
そして所有者が判明しても、所有者が撤去に応じなければ、その先の手続きがスムーズに進みません。所有者が判明しなかったり、所有者が海外に転出済みで連絡がつかなったりする場合などは、司法の手続きを経るなどして、処分することになります。
この場合、公道であれば税金を使っての処分となりますが、時間貸し駐車場などでは運営会社などが費用を負担することになります。場合によっては撤去のための費用が、撤去後にその区画で見込まれる収入を上回る可能性もあり、仕方なくそのまま放置せざるを得ないこともあるようです。
こうした問題がある以上、今後はクルマの不法な遺棄を防ぎ、また万一遺棄が発生した場合にスムーズな処分ができるよう、法制度の整備を進める必要性は、各方面からいわれています。
たとえばクルマの購入時、リサイクル料金とは別に一定額を登録情報と紐付けたデポジットとして公的機関が預かり、適正に処分された場合は所有者に返金し、不法な遺棄があった場合はそのデポジットから費用を捻出するといった制度も考えられます。ただこういった制度は、多くの真っ当なドライバーの反発を受けることは必至で、実現はなかなか難しそうです。
Writer: 植村祐介(ライター&プランナー)
1966年、福岡県生まれ。自動車専門誌編集部勤務を経て独立。クルマ、PC、マリン&ウインタースポーツ、国内外の旅行など多彩な趣味を通し積み重ねた経験と人脈、知的探究心がセールスポイント。カーライフ系、ニュース&エンタメ系、インタビュー記事執筆のほか、主にIT&通信分野でのB2Bウェブサイトの企画立案、制作、原稿執筆なども手がける。
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