日本の降伏文書調印 なぜ戦艦「ミズーリ」で行われた? その象徴的な意味とは

日本の降伏文書調印式はなぜ、戦艦「ミズーリ」を使い、艦上で行われたのでしょうか。この「ミズーリ」という戦艦の艦生とともに見てみましょう。

「もうソ連には文句を言わせん」という意思の表れ?

 実は同年5月にドイツが無条件降伏した際は最初、フランスのランスでアメリカ、イギリス、フランスが参加して降伏文書の調印式が行われました。しかし、これに不満を覚えたソ連が、ベルリンを陥落させた自国が主導的な立場であるべきと強く主張。結果的にベルリンで再度、正式な降伏文書調印式が行われ、ソ連が主導的役割を果たしたと強く演出したことがありました。

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記念艦としてハワイの真珠湾に置かれることになった「ミズーリ」(画像:アメリカ海軍)

 そのため、対日戦の勝利に関しては場所の指定、式典の進行などすべてをアメリカ主導で行い、ソ連に主導権を与えないようにしたという面もあります。そのためには、スペース的に余計な人員の派遣が不可能で、他国が口を出しにくい自国の戦艦の甲板が最適だったという訳です。

 連合国各国の戦後の覇権をめぐる争いは、実はこのときすでに始まっていました。アメリカには、戦後のソ連との対立に備え、ソ連の極東地域に近い日本の占領政策に関しては自国主導で是が非でも行いたいという思惑がありました。そのため、日本が“連合軍”ではなく“アメリカに”降伏したと思わせること。それが占領政策の正当性を訴えるうえで、何より重要だったのです。その点では、警護が容易で、第二次大戦以前はその国の戦力の象徴でもあった戦艦は、調印式の舞台装置としてはうってつけでした。

 戦艦の威厳のある雰囲気は、当時太平洋の海戦では実質的な主役であった空母には出せないものでした。加えて飛行甲板は風などの問題で文書を扱うには不向きです。様々な面で圧倒的に戦艦が優れていました。

 さてこの降伏文書調印式という重要な役目を務めた戦艦「ミズーリ」はその後どのような艦生をたどったのでしょうか。調印式の後、アメリカに戻った「ミズーリ」は、同年10月27日のアメリカ海軍記念日の式典で、トルーマン大統領も乗艦し、21発の礼砲を発射するというこれまた大役を仰せつかりました。その後も何度か大統領の移動に使用されています。

 1950年代に入ると朝鮮戦争で活躍し、1955年2月に退役、太平洋予備隊に入りました。しかし、約30年後の1984年、海軍長官ジョン・F・リーマンによる「600隻艦隊構想」により「ミズーリ」は突如復活します。 最新鋭の武器最新の電子機器が搭載され、サンフランシスコで再就役、湾岸戦争へと送り出されました。そして、最後の任務は、ハワイで真珠湾攻撃50周年記念式典への参加となりました。

 現在、戦艦「ミズーリ」は、ハワイの真珠湾で、「戦艦ミズーリ記念館」として展示されています。

【90年代まで現役!】これが、湾岸戦争で艦砲射撃を行う「ミズーリ」です(画像)

Writer:

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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