まるでホテル!な「豪華高速バス」なぜ生まれなくなったのか? 明暗を分けたもの
個室風座席の「マイ・フローラ」や完全個室の「ドリームスリーパー」など、一時期話題となった夜行高速バスの豪華バス。最近は新たな豪華バスの話題を聞かなくなりました。事業者は戦略を変えたのでしょうか。
「空中戦」を展開し、「地上戦」で勝ち抜く
その戦略は成功し、2025年現在、同社の大阪線は最大10往復まで成長しました。ふつう、既存事業者が高頻度運行しリピーターが定着している区間に、後発組が少ない便数で参入しても勝ち目がありません。しかし同社は「マイ・フローラ」を広告塔とする一方で、パーク&ライド用駐車場を自ら整備するなど地道な「地上戦」も戦い抜きました。

筆者(成定竜一・高速バスマーケティング研究所代表)には印象的だったシーンがあります。夜、徳島駅前で東京行きの「マイ・フローラ」を待っていたら、たまたま同社の大阪線が到着しました。そこに飲み会帰りの会社員らが通りかかり、上司らしき人が「このバスは青色やろ。有名な豪華なヤツはピンクなんよ。知っとるか?」 まるで昭和のコントで上司が部下に自慢話をするシーンのようで笑ってしまいましたが、間違いなく海部観光が地元に受け入れられたと実感した瞬間でした。
今のところ豪華バス究極系?「ドリームスリーパー」の思惑外れ
2017年には、岡山の両備バスと東京の関東バスが共同運行で「ドリームスリーパー」をデビューさせます。両社はいずれも老舗の事業者です。
完全個室、かつ「マイ・フローラ」より1席少ない11席という仕様からは、後発の中小事業者に過ぎない海部観光を意識したことが伝わります。東京~大阪線という舞台を選んだ点にも「日本一」へのこだわりが見えます。
しかし同車はコロナ禍による運休を経て共同運行を組み替え、現在では、関東バスと奈良交通が、主に週末限定で運行しています。登場時には「新幹線より豪華で“出張客”に人気」というメディア露出が多かった同車ですが、週末運行という現状をみると当初の狙いは外れたようです。
確かに、東京~大阪というと出張客が多い印象があります。対して徳島は鳴門の渦潮などの観光客でしょうか。しかし、もう一歩深く市場を分解すると違う結果となります。
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