インバウンドで潤ってるんじゃないの? さらに値上げ「貸切バス」縮小市場で各社は何を?
貸切バス運賃がさらに値上げ。一時は「買い叩かれる」存在だった貸切バスは、横並びの運賃制度で保護されました。しかし市場が縮小するなか、老舗が貸切バス事業から撤退するなど、各社が“次”を模索している状況です。
殿様商売がなぜ「買い叩かれる存在」になったのか?
しかし、国民が豊かになり旅慣れが進むと、旅行形態は団体旅行から個人旅行へとシフトし、貸切バスの出番も減り始めます。自家用車の普及や高速道路の延伸などにより、クルマ旅行も増加しました。バブル崩壊後の1990年代後半から社員旅行は激減しました。

ちょうどその時期、国全体で規制緩和の流れが到来し、貸切バスも参入規制が緩和されました。需要減少と供給増加が同時に起こったのですから、「殿様商売」は一転。旅行会社が買い叩く「買い手市場」となり、運行コスト削減により重大事故も相次ぎました。
その後、国などの監査体制が強化され劣悪な事業者は退出するとともに、冒頭で述べたように運賃(チャーター代)は再び上昇し、業界としては一息ついたのです。
もっとも、貸切バス市場の今後を考えると、市場の縮小は必定です。個人旅行化の動きは加速しますし、少子化で教育旅行市場も縮小します。以前は「1学年で5学級、5台口」が普通でしたが、今では「2学年でバス1台」という例も目立ちます。
インバウンドで需要“爆増”とはいかず
インバウンドも、一時は「爆買いツアー」という言葉さえ生まれましたが、今日では団体ツアーではなくFIT(個人自由旅行)中心に変化しています。精緻なデータがなく筆者(成定竜一・高速バスマーケティング研究所代表)によるラフな推計ですが、2024年の団体での訪日客数は、2014~15年当時と同レベル。その間に、訪日客全体の数は2倍に成長しています。
その分、新宿~富士五湖や博多~太宰府などの高速バスはFITの需要が爆発していますが、貸切バスの需要は伸びていません。
それどころか、貸切バス運賃の再値上げが伝えられると、年間契約で貸切バス事業者に発注していた従業員の送迎業務(駅~工場など)を、自社で車両を購入し自社または管理請負業者の従業員が運転する内製化(白ナンバー化)の検討に入る企業も出てきました。
足元では、国の制度により「走れば必ず儲かる」状態。一方で長期的には縮小が予測される市場。難しい環境の中、各社の戦略は分かれます。
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