反響多数! 米陸軍が切り捨てた「戦車みたいな軍用車両」海兵隊が欲しがっているのは本当か? 噂の出所に隠された思惑とは

アメリカ陸軍が調達開始からわずか1年で採用を取り止めたM10「ブッカー」戦闘車。ただ、一方で海兵隊が同戦闘車を欲しがっているというハナシもあります。本当なのか、情報の出どころを探りました。

米海兵隊にとって理想的な戦闘車両ってホント?

 M10「ブッカー」の調達中止が決定してから約1か月後の6月中旬、「アメリカ海兵隊がM10ブッカーを採用?」のような情報を、主にインターネットで目にするようになりました。

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アメリカ陸軍のMRZR。海兵隊もULTV(超軽量戦術車両)の名称で導入している(画像:アメリカ陸軍)。

 筆者(宮永忠将:戦史研究家/軍事系Youtuber)が調べた限り、その報道の初出は「TASK&PURPOSE」というアメリカ国内における退役軍人向けのネットメディアでした。

 そのなかで公開されていたのが、「海兵隊がM10ブッカーを採用すべき理由」というオピニオン記事です。この記事は、アメリカ海兵隊で第3軽装甲偵察大隊長を務めるジョン・J・ディック中佐と、同副大隊長のダニエル・D・フィリップスが連名で記したものでした。

 ここで、陸軍に納入済みの約80両のM10戦闘車を、海兵隊で引き取るべきではという提言が行われており、その理由として以下のように記していました。

「現在、アメリカ海兵隊は、「フォース・デザイン2030」(詳細は後述)の一環としてM1A1『エイブラムス』戦車を廃止し、偵察戦力にはULTV(ULTRA-LIGHT TACTICAL VEHICLE:超軽量戦術車両)やLAV-25装輪戦闘車両を中心に再編されている。しかし、これらは防御力・火力が不十分で、無人機や近代的な歩兵戦闘車(IFV)、戦車を擁する敵に対しては生存性が低い。したがって『直接火力』が必要とされ、そこでM10戦闘車が導入できれば解決するだろう」

 M10は、105mm砲を搭載するため、軽装甲車両や敵が立てこもる陣地を制圧できる強力な火力を持ち、かつULTVやLAVよりも高い防御力を備えています。一方で、重量約42tとM1「エイブラムス」戦車よりも軽量なため展開力にも優れており、なにより製造済みなので、短期間で戦力化できます。

 こうして見てみると、メリットだらけというわけです。実際、陸軍の不採用兵器を海兵隊が引きとった例はあり、たとえば前出のLAV-25はそのような流れで、いまでも海兵隊が使い続けています。M10「ブッカー」は、海兵隊にとって安価に火力と防護を獲得できる魅力的な選択肢というわけです。

【もう見られない?】これがM10「ブッカー」戦闘車の105mm砲射撃です(写真)

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