F-16も撃墜したと主張「ソ連生まれの傑作戦闘機」ついにインドから退役 まだ使い続けている国とは?

インド空軍が60年以上も使い続けてきたMiG-21戦闘機が、ついに完全退役しました。最後まで運用していたのは、同国北部にあるチャンディーガル空軍基地に所在する第23飛行隊でした。

インド空軍での苦闘の62年間

 2025年9月25日、インド空軍は62年間にわたり運用してきたMiG-21戦闘機を完全退役させました。

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インド空軍で最後まで残ったMiG-21戦闘機。垂直尾翼を特別に三色で彩っている(画像:インド国防省)。

 退役にあたり、同国北部にあるチャンディーガル空軍基地では盛大な式典が行われ、空軍高官が列席するなか、最後の運用部隊となった第23飛行隊のMiG-21が編隊飛行を披露。着陸後には消防車によるウォーターサルート(放水アーチ)でその功績を称えました。

 MiG-21は旧ソ連(現ロシア)で開発・量産された単発エンジンの小型戦闘機で、細長い胴体にデルタ形状の主翼を備え、機首に大きなエアインテークを持つのが特徴です。超音速飛行が可能で機動性にも優れ、ドッグファイトに適した性能を持っていましたが、航続距離の短さが弱点でした。それでも旧ソ連だけでなく東側諸国や発展途上国を中心に広く輸出され、生産数は1万機を超えます。

 インド空軍では1963年に初めて配備され、その後は国内でのライセンス生産も行われ、最終的に874機が導入されました。長い運用の中で段階的な改修が施され、最終型は「MiG-21 Bison」と呼ばれています。

 1971年の印パ戦争を皮切りに、インドとパキスタンの衝突で繰り返し投入され、対地攻撃や制空任務で重用されました。実際に戦闘で敵機を撃墜した記録もあり、2019年のジャンムー・カシミール空爆の際にはパキスタン空軍のF-16「ファイティングファルコン」を撃墜したと主張しています(パキスタン側は否定、アメリカも確認せず)。なお、インド国防省も今回の退役に際して「62年間インドの空を守り、パキスタン空軍のF-16を含む各世代の戦闘機を撃墜した」と公式SNSで強調しました。

 一方で近年は老朽化による事故が相次ぎ、2021年から2023年の間だけでも少なくとも6件の墜落事故でパイロットが殉職。インドの報道によれば、62年間の運用で400件以上の墜落事故が発生し、200名近くのパイロットが命を落としているそうです。

 インド空軍は現在、MiG-21の後継として独自開発した軽戦闘機「テジャス」の配備を進めるとともに、Su-30MKIやラファールといった第4世代以降の近代戦闘機を戦力化。こうして新型機が充当したことで、“時代の象徴”ともいえる戦闘機を退役させるに至りました。

 一方、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)やキューバ、シリア、イエメン、アンゴラなどでは現在もまとまった数が現役で運用されています。

【写真】もう見られない インド空軍MiG-21の飛行シーンです

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雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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