「こ、コイツで台風に突っ込んでいく…?」 超異形な「水素をつくる船」とんでもない運用法も明らかに
商船三井が開発する水素生産船「ウインドハンター」。風力を活用して航行しながら船内で水素を生産・貯蔵する革新的なコンセプトの船は、どこまで開発が進んでいるのでしょうか。
台風に突っ込んでウインドハンティング!?
万博の大型模型は本格的な商用化を前提としたもので、風力推進装置である硬翼帆「ウインドチャレンジャー」をより多く搭載するため双胴型のデザインを採用しました。実際のウインドハンターは、全長230m、全幅60mという大きさになり、甲板上には高さが最大で約90mになるウインドチャレンジャーが左右両舷に6基ずつ、計12基が設置される見込みです。
「過去の海象の記録やデータを見ると、北の方が良い数字が出せる。消費地から近い海域へ行き、そこで水素を作って帰って来られるのが一番良いが、揚げ地や航行エリア、さらには季節の関係など、さまざまな組み合わせが出てくる。これからの調査でそれを探っていく」(山口氏)
また、ウインドハンターは将来的に乗組員を乗せない無人運航船として運用することが想定されており、そのため有人船では出来ない、台風の縁まで近づくようなオペレーションも考えられます。
「基本的に横風を推進に変えるのが一番。風が同じ方向からずっと吹き続けると非常に強いエネルギーを得ることができる。台風はその外側で風が比較的ずっと同じ方向に吹いており、これは結構使えるのではないかと思っている」(同)
商船三井は今後、まずウインドハンターの実証船を建造し、経済性と安全運航を検証する予定です。現在はその前段階として、12mの小型ヨット「ウインズ丸」による実証試験を東京湾で行っています。
また、2025年3月にはグリーン水素の生産とMCHへの変換、陸上への荷揚げに成功しています。今年度は東京湾でのグリーン水素の生産活動を継続し、約100ノルマル立方メートル(摂氏0度時の水素の体積を表す)を生産するとともに、中央防波堤エリアに設置されたトレーラーハウスなどへの電力供給を計画中です。
「水素を作る方法はいろいろあるが、グリーン水素の生成は、国内でエネルギーを作れるそんなに多くない要素の1つではないかと思う。海を走って風を取って、水素をどこでも運べるというのは、ウインドハンターが持つ優位性だ。このコンセプトを使える場所を探し出し、それを投入することでGHG(温室効果ガス)削減と水素社会に貢献していけたら良いなと思っている」(同)
商船三井は万博に続き、10月30日から11月9日にかけて東京ビッグサイトで開かれる「ジャパンモビリティショー2025」でもウインドハンターに関する展示を行います。ぜひ異形の水素生産船をその目で確かめてみてはいかがでしょうか。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。





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