「ANAのパイロットになるための訓練」最前線に密着 “エグい”空港で行われる濃密な訓練… そして「国内初」の仕組みも導入
入社した後一から訓練を積み、パイロットに必要な資格を取得する「自社養成パイロット」。ANAはどのようにして次世代を担うパイロットを育てているのでしょうか。訓練プログラムの最前線を今回、取材することができました。
コロナ禍を経て「フロリダ」に
ANA(全日空)の自社養成パイロットたちは2025年現在、アメリカ・フロリダ州のサンフォード空港にある「Acron Aviation」社の訓練施設でパイロットになるためのトレーニングを積んでいます。ANAはどのようにして次世代を担うパイロットを育てているのでしょうか。訓練プログラムの最前線を今回、取材することができました。

パイロットになるには、航空大学校をはじめとする専門機関でパイロット資格を取得し入社する、入社した後に一から訓練を積み、パイロットに必要な資格を取得する方法などがありますが、自社養成パイロットは後者にあたります。ANAの自社養成パイロットはイギリスでの約800時間の学科訓練、そこからサンフォードでの約180時間のフライト訓練を経て、CPL(事業用操縦士)とIR(計器飛行証明)のライセンスを取得するとのことです。
ANAの自社養成パイロットの訓練地は、長年アリゾナで行われてきましたが、コロナ禍を経て、ANAは新たな訓練所としてフロリダ、そして「アクロン・アビエーション」を選んでいます。
この場所を選んだ決め手について現地で訓練生の指導を行うANAの教官は次のように説明しています。
「当初は、実はヨーロッパで訓練を行いたいと考えていました。アメリカのフライトスクールは、エアラインに入るために必要な1500時間の飛行時間を稼ぐ目的で、若い新人教官が教えているケースが多いという産業構造があります。一方でヨーロッパは、教官としての在籍期間が長い傾向があったためです。しかし、実際にイギリスで訓練を試みたところ、天候の問題などで効率が上がらず、ここフロリダに来ることになりました。懸念していた教官の経験値の浅さについては、教え方の標準化が進んでいることでカバーできると判断しました」
教え方の標準化とはどういったものなのでしょうか。教官は「ビルディングブロック方式」という方式について紹介しています。
「初期の課題に対し、1回のフライトで教えることを一つに絞るのです。例えば、最初は離着陸もせず、水平飛行だけを練習する。それができたら、次のレッスンでは旋回を、その次は上昇・降下を、というように、フライトの要素を一つずつ積み上げていきます。メリットは、教官による指導の差が出ないことです。初めから全部やらせて、訓練生が混乱してしまうような事態を防ぐことができます」
そのようななか、ANAでは国内航空会社では先んじた効率的な訓練プログラムを導入しています。これが「Integrated CPL/IR 訓練」と呼ばれるものです。これはANAと国土交通省が長年の協議のうえ、2024年に国内でもこの訓練によるライセンス発給が可能になったものといいます。それはどういったものなのでしょうか。
コメント