「旅客機とヘリの空中衝突」米では“理性的な”新法案で対策へ 一方日本は「運航側の負担増」海外関係者も驚き
旅客機と陸軍ヘリの空中衝突事故を受けて、アメリカでは新たな法案が成立する見込みです。どういったものなのでしょうか。一方似た事故が発生した日本では、まったく別の対策を講じていました。
日本とは全く異なる「衝突事故後の国の予防策」
ワシントンの航空機衝突事故は夜間に管制圏、それも管制塔から視認可能な範囲内で起きている点などの複数の点において、羽田空港で起きたJAL(日本航空)機と海上保安庁機の衝突事故と似ています。これら2つの衝突事故に対して日米の航空当局は全く方向性の異なる対策を講じようとしている点に注目する必要があると筆者は考えています。
というのも、アメリカでは新しい技術の導入により航空機の運航状況の可視化を進めようとしているのに対し、日本は新技術の導入ではなく、パイロットに新たな訓練を課すことによって事故対策を講じているように見せかけていると見られるからです。
今日の航空機の卓越した安全性は多くの技術の積み重ねにより達成されたものです。これは、新しい技術の力により自動化を進め人間によるエラーを排除してきた歴史でもあります。事故防止と安全の確保は新しい技術を積極的に取り入れることでパイロットの負担を軽減して達成されてきたといえるでしょう。
ところが、羽田の事故後、国交省が発表したCRM訓練と呼ばれる新たな訓練の義務化はパイロットに新たな負担を求めるもので時代の流れに逆行しています。
羽田空港で衝突事故が起きた時、海外メディアが最初に注目した点は、海保機にADS-Bが搭載されていなかったことです。日本一の混雑空港でADS-B未装備の機体が運航されていたことが、海外視点でみる奇妙に感じたのです。
そして、事故後の安全対策として国交省が発表したことがADS-Bの導入ではなく、パイロットに追加の訓練を強要する内容であったことも、海外の航空関係者を再び驚かせています。
同様な事故を防止するために日本に必要なのはパイロットの訓練ではなく、ADS-Bの導入を先行させるべきであることは異論の余地がないからです。各国で普及が進んでいるADS-Bですが、日本ではADS-Bの導入に関してはいまだに発表すら行われていません。安全技術の面で日本だけが世界から取り残されている状況なのです。
ADS-Bはすでに世界中でその機能と信頼性が実証されている成熟したシステムです。パイロットに新たな負担を要求する前に、すでに実証されている新技術の導入が何よりも重要であると筆者は考えています。
Writer: 中島二郎(航空アナリスト)
各国の航空行政と航空産業を調査するフリーのアナリスト。





日本の悪い癖が出てますね、人間は必ずミスをすると考えないといけないのに精神論ばかり