たった1編成だけの「豪華2階建てJR特急」そのバブルっぷりがすごかった! 今は姿を変えて“転職”
JR特急形電車の中でも特に製造両数が少ないJR東海371系は、小田急ロマンスカー20000形との共通運用を前提に開発されました。現在は、富士急行線で活躍するこの特急形電車について紹介します。
富士山麓で「RSE」との共演が続く
普通車も幅1.65m、高さ1.02mの大型窓を採用し、窓柱を35cmとできるだけ細くすることで、JR東海がキハ85系で好評を得た「ワイドビュー」車両となっていました。普通車の座席間隔は100cmで、背面テーブルとフットレストを備えていました。
車内はグリーン車・普通車ともカーペット敷きや間接照明を採用し、洗練された雰囲気でした。さらに、電子レンジや冷蔵庫、簡単な調理施設を備えたサービスカウンターがあり、グリーン車ではシートサービスも行われました。「あさぎり2号」のグリーン車では、和洋食のシートサービスが利用できました。果物は車内でカットするというこだわりでした。
わずか1編成のために多彩な設備を大量に投入した371系電車は、まさに「バブル期の申し子」ともいえる豪華車両でした。
完成した371系は1991(平成3)年から新宿~沼津間の特急「あさぎり」と、静岡地区の「ホームライナー」で運用され、好評を博しました。
しかし、バブル崩壊とリゾート開発の衰退、西伊豆の観光需要の低迷もあり、2012(平成24)年に特急「あさぎり」は、小田急60000形「MSE」による片乗り入れとなります。
371系は「ホームライナー」や臨時列車用として2014(平成26)年まで走った上で引退。翌年には富士急行(現・富士山麓電気鉄道)に譲渡されて、8500系電車となりました。2階建て車両などが廃車されて、残った3両は工業デザイナー水戸岡鋭治氏によるリニューアルが行われました。木材を多用した和風内装への変更でしたが、自慢のワイドビューに木枠をはめ込んで1列1窓にしたことは議論を呼びました。
現在、8500系は「富士山ビュー特急」として走っています。同じ富士山麓電気鉄道の「フジサン特急」は、かつて特急「あさぎり」で共演した元小田急「RSE」を改装した8000系電車であり、現在も富士山のふもとで共演は続いています。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。





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