「AI使ってパイロット1人体制の旅客機」実現するか? “まだまだ先”と判断せざるを得ない納得の理由

AIの進化で、将来的に副操縦士が不要になる可能性も議論されるかもしれない旅客機。しかし、機長と副操縦士の2人体制は当面維持されるでしょう。どういった理由からなのでしょうか。

かつては普通だった「コクピット3人以上」

 2025年現在の旅客機は機長・副操縦士の2名体制で操縦が行われることが一般的です。しかし近年目まぐるしい進化を遂げているのが「AI(人工知能)」。このことで旅客機の運航においては将来的に副操縦士を廃止し、パイロット1名が操縦室にいる可能性も起きるかもしれません。果たしてそのような時代が本当に来るのでしょうか。

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JALの旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。

 かつての旅客機の運航にはもっと多くの人が関わってきました。たとえば航空機関士はかつて一般的に3人目の運航乗員として乗務しましたが、1980年代から90年代にかけて航空機メーカーが大幅なハイテク化を進ませ、2人体制の乗務がスタンダードに。それにともない、航空会社で働く航空機関士は非常に少数になりました。そして昨今の「AI活用」時代を迎えたわけです。

 ただ、2人乗務の体制が崩れることはあったとしても、まだまだ先のことになると筆者は考えています。というのもそもそも、副操縦士は機長へ昇格するため実際に乗務経験を積まなければならないからです。機長の補佐という立場以外にも、副操縦士は「機長になるために技倆を磨く場」でもあるわけです。

 コンピューターに旅客機の操縦を任せることは、既に1980年代から大幅に導入されています。当時のエアバスA300-600RやA320、ボーイング747-400などで行われたこうしたハイテク化は、コンピューターが航空機関士の役割を担い自動操縦もこなす結果、操縦室は機長と副操縦士の2人体制という省力化が図られました。

 ただし、このハイテク化は操縦士にとって急激でもあったため、初期は大きな事故も起きました。操縦士が誤った情報を入力してもそれをコンピューターが忠実に実行したり、逆にコンピューターの計算結果判断と操縦士の操作が対立したりもしたためです。コンピューターはいかに速い計算速度で答えを出しても、それが危険な結果を生まないか、などまで判断はできなかったからです。

 これに対して、AIは高い計算能力を持つのみならず自ら学習する能力を備えているとされています。ディープラーニングにより操縦士が数十年かかつて蓄積する知識を短時間で吸収し、それを活かして“思考”します。

 となると、過去のトラブルや事故例を参考に、予め危険を回避することも期待できますし、操縦士の操作と対立するような場面でも、AIはなぜその操作を選んだか説明ができるかもしれません。

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