ディーゼル特急の最高峰!? かつて「最速」を誇った北の高性能車両、最後の活躍が続く 自慢の機構は「線路側が耐えられない」

1997(平成7)年に登場したJR北海道のキハ283系は、振り子式気動車としては完成系ともいえる高性能車両でした。現在は振り子機能を使わず、特急「オホーツク」で最後の活躍を見せていますが、これまでの経緯を振り返ってみましょう。

JR四国2000系を基に誕生

 JR北海道の気動車特急の主力車両だったキハ283系。登場から29年を迎えようとするなか、活躍の機会が狭まっています。今は自慢の「振り子機構」も使わずに運行する同車ですが、どのような車両だったのでしょうか。

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JR北海道のキハ283系特急形気動車(安藤昌季撮影)

 JRグループの特急形気動車で、曲線通過時の速度を大幅に高める「振り子式」を初めて採用したのは、1989(平成元)年に試作車が登場したJR四国2000系です。

 気動車はエンジンからの動力伝達により車体に回転力が発生するため、振り子機構の妨げになると考えられていました。しかし、2000系は1車両に2台のエンジンを搭載し、回転方向を逆にして相殺することで振り子式を実現しました。

 JR北海道も1992(平成4)年、2000系を元にキハ281系を開発。130km/hの最高速度と本則+30km/hの曲線通過速度で、函館~札幌間の所要時間を非振り子式である183系の3時間29分から、2時間59分まで短縮しました。停車時間を含めた表定速度は106.8km/hに達し、気動車でありながら当時の在来線特急最速を記録したのです。

 このキハ281系を改良して、1995(平成7)年に試作車が登場したのが、キハ283系です。車体傾斜角度をキハ281系の5度から、キハ283系は6度に拡大し、半径600m以上の急曲線で本則+40km/hの通過速度を実現し、特急形気動車としては最高の高速性能を誇りました。

 キハ283系は空調装置を床下に移すなどの低重心化が図られ、振り子式ながら優れた乗り心地を実現しました。普通車座席は、2+2列フリーストップ式リクライニングシートです。脚部が片持ち式となったことで足元のスペースが広がり、居住性が向上しました。

 1+2列のグリーン車は電動リクライニング、電動フットレスト、ヘッドフォン式オーディオ、パソコン用電源(1人掛け座席のみ)、電動式カーテンを搭載。航空機のようなふた付きの荷物棚が採用され、内装も優れていました。客室乗務員(ツインクルレディ)によるきめの細かいサービスもあり、JR九州の787系と並ぶ「国内在来線特急最高のグリーン車」と呼ばれるほどの快適性を誇りました。

 筆者(安藤昌季:乗りものライター)は、座席鉄として歴代特急形車両のほとんどのグリーン車座席に座りましたが、キハ283系は頂点に近い居住性を備えていたと感じます。現在の車両でいえば、JR四国8600系グリーン車の座席に近い感覚です。

 なお、キハ283系の普通車指定席は2006(平成18)年から座席幅の拡大や背もたれ枕の設置などが行われ、居住性がさらに向上しています。グリーン車も2011(平成23)年から座席が交換されていますが、こちらは他の系列に揃えた仕様で、居住性の向上はあまり実感できませんでした。

札幌~釧路間を45分短縮!

 キハ283系の量産車は、1997(平成9)年から札幌~釧路間の特急「スーパーおおぞら」に投入。所要時間はそれまでのキハ183系による最速4時間25分から、3時間40分に短縮しました。高い居住性と大幅な高速化により、9両編成だった「スーパーおおぞら」は増結の必要性が認められ、制御式振り子装置を改良して、最大11両編成を組めるようになりました。

 さらに最高速度を140km/hまで上げることも検討されましたが、これは実現しませんでした。なお、酷寒地での高速運転により、車体に付着した氷塊が落下時にバラストを跳ね上げて側窓を破損する事例が多発したため、2001(平成13)年から側窓をポリカーボネートの透明保護シートで強化しています。

 2011(平成23)年には石勝線での脱線火災事故により、キハ283系6両が全焼。こうしたこともあり、JR北海道は特急列車の最高速度を130km/hから120km/hに、特に「スーパーおおぞら」は110km/hまで引き下げました。

 このため、「スーパーおおぞら」は最速列車でも札幌~釧路間の所要時間が4時間11分となりました。2013(平成25)年、キハ283系は「スーパー北斗」などの定期運用から撤退し、2020年からは「おおぞら」からも撤退。廃車も始まります。

 一方で、2023年から石北本線の特急「オホーツク」「大雪」でキハ183系を置き換えて、キハ283系が運用されるようになりました。ただし、石北本線の線路側が対応できないという理由で振り子機構は使用せず、所要時間の短縮もありませんでした。その後、2025年に「大雪」が特別快速に格下げされたため、現在、キハ283系は特急「オホーツク」のみで運用されています。

 3両編成で全車普通車という寂しい現状ですが、優れた内装や普通車指定席のすばらしい居住性は健在です。気動車特急最速のキハ283系、その最後の活躍が続いています。

【快適!】JR北海道「傑作車両」の車内を見る(写真)

Writer:

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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