「AI使ってパイロット1人体制の旅客機」実現するか? “まだまだ先”と判断せざるを得ない納得の理由
AIの進化で、将来的に副操縦士が不要になる可能性も議論されるかもしれない旅客機。しかし、機長と副操縦士の2人体制は当面維持されるでしょう。どういった理由からなのでしょうか。
「訓練の場」以外にも“2人体制維持”が有力な理由
ただし、機長のみの乗務は「人」ならではの問題も考えられます。操縦室で長時間の “孤独”に耐えることができるかということです。
“孤独”といっても単に寂しいだけが理由ではありません。
巡航中、機長と副操縦士は常に計器を監視し、異常がないかチェックを行っています。乱気流が予想された場合への対応や、天候の急変による代替空港の選択など、予期しない課題へ時間をかけずに判断を下さなければならないこともあります。こんな時、人間同士の当意即妙の受け答えが大きな支えになります。疲労も蓄積される十数時間の長距離国際線では、2人乗務は互いを支え合うのに適していると考えられるでしょう。
AIの信頼性が飛躍的に向上すれば、無人操縦の導入が議論される可能性もあります。しかし、旅客機は地上の交通機関とは異なり、国際線では十数時間も高高度を飛行します。その間、運航中すべての操縦をAIに任せることを社会が世論として受け入れるかは別問題です。副操縦士に代わるAIの導入は、かつて航空機関士が姿を消した過去の事例ともつながりますが、もし旅客機の操縦にAIが導入されたとしても、機長と副操縦士の2人体制は当面続くと考えられます。
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。





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