「建造OKでた!」韓国の原子力潜水艦、そもそもつくれるのか? 「ならば日本も…」は現実的? 日韓の大きな“差”
トランプ大統領が韓国の原子力潜水艦建造を容認しました。30年来の悲願達成へ道が開けましたが、韓国側の課題は山積。日本の保有議論にも影響を与えそうです。
日本が保有するなら“もっと高い壁”
韓国の原潜保有はこのような流れを加速していくのではないかと思いますが、実際に日本が原潜を保有するにあたって越えなければならないハードルは、韓国よりも高いといえるでしょう。
日本は現時点で世界唯一の核兵器による被爆国ですし、1974年に起こった原子力船「むつ」の原子炉からの放射能漏れ事故や、2011年3月に起こった東京電力福島第一原子力発電所の炉心溶解事故などによって、日本国民にもたらされた「原子力アレルギー」は、根強いものがあると思います。
現行の「原子力基本法」は、原子力の利用を平和的な目的に限定しています。原潜の保有はこの法律の骨子と矛盾しますし、法律の根幹をゆるがす可能性もあります。国民のあいだに根強く存在する原子力アレルギーの払拭と原子力基本法の改正は容易なものではないと思いますが、それができない限り、原子力潜水艦の保有は困難だと筆者は思います。
韓国は30年研究 日本は?
韓国が原潜を保有する場合、おそらく建造を担当することになるハンファ・オーシャンは、2025年5月に釜山で開催された海洋防衛装備展示会「MADEX」に、次世代潜水艦のコンセプトモデルを出展していました。
「これは原潜のコンセプトモデルなのですか?」という筆者の質問に対して、ハンファ・オーシャンの担当者は「必ずしも原潜に限定したモデルではないけれど、弊社は大宇造船海洋時代(2023年にハンファ・グループの買収により社名変更)から、30年以上原潜の研究を行ってきたので、燃料入手の目途が立てば、このような原潜も作ることができると確信している」と述べていました。
5月の時点では韓国の原潜建造の目途が立っていなかったので、それ以上突っ込んだ話はしなかったのですが、10月31日付の中央日報は、ハンファ・オーシャンの特殊船事業部が原潜の研究を専門に行うプロジェクトチームを設けて、原潜の設計や運用シミュレーションなどを蓄積してきたと報じています。
日本でも小規模な原潜の研究は行われていた可能性はありますが、本気で保有しようと思ったら、韓国並みの研究の蓄積が必要になります。
韓国の原潜保有により、日本でも原潜保有議論が活発化することはあってしかるべきだと思いますが、単なる軍事的合理性だけではなく、日本国民の感情や現行法、韓国が長年原潜保有のために重ねてきた努力といった要素も勘案した上で、議論を進めていって欲しいと思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。





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