ここまで凝りまくって「1日限り」で終了!? 前代未聞「車内まるでジャングル」な電車が世田谷を走行 これぞ「本物のグリーン車」と知事
東急電鉄世田谷線で、車内をまるでジャングルのように植物で装飾した電車が1日限定で走行。東京都の小池百合子知事が「本物のグリーン車」とご満悦だった車内は、大都会を駆けていることを忘れさせる“走る公園”に仕上がっていました。
なるほど、「1日限定」のワケだ…
筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が「のるるんグリーンパーク」の車内に足を踏み入れると、床には人工芝が敷かれ、壁面の上部をはうように人工観葉植物(フェイクグリーン)が連なっています。一方、客室の扉の横に飾った植木鉢には本物の植物も飾られており、手が込んでいるのは一目瞭然です。
どのような方が装飾したのかが気になっていると、車内に“仕掛け人”がいらっしゃったのでお話をうかがいました。グリーンディスプレイの企画・施工を手がける野沢園(世田谷区)のデザイナー、安達恒二さんです。
電車内を緑化するのは初めてだったという安達さんは「東京都に自生している植物を使ってほしいというお客様の要望に沿い、都内で自生している10種類ほどの本物の植物を中心に飾り付けました」と明かしました。植木鉢はアオキやヤツデなどで装飾し、天井の下にある手すりにくくりつけた人工のコケ玉にはベニシダやリュウノヒゲを取り付けました。
「前日に装飾した」という安達さんに特に注意を払った点を尋ねると、「お客さんの動線の邪魔にならないように、極力上の方で装飾するように心がけました」と説明。また、動く電車内の装飾は、「揺れることもあるため安全面に気をつけ、あんまりフラフラする物とか、ちょっとつかむと簡単に抜けてしまうような物は避けました」とし、「これもしっかりと取り付けています」と人工のコケ玉の付け根を指さしました。確かに外れないようにしっかりと固定されていました。
安達さんは「本当はもっとジャングルのようにしたかったのですが」と笑いましたが、そのような細心の注意を払ったからこそ参加した子どもたちも安心して乗車できました。
参加した女児は「自然な感じで、きれいな電車だと思いました」と評価。「普段も世田谷線に乗っている」という世田谷区在住の小学1年生の男児も「自然できれいな感じがいい」と話すなど、評価は上々でした。
「1日限定」なのは惜しいほどの見事な“走る公園”でしたが、「植物の水やりが難しい」(関係者)ため運行はこの日限り。ただ、野本氏は「緑が大事だという子どもの時の思い出は、大人になってからも残る」と訴え、記憶に強く刻んだ子どもたちの未来に期待を寄せました。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。





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